「資金調達」に関する適時開示で、株価は上がるのか、下がるのか?
「新株予約権付社債発行」に関する適時開示が行われた場合
新株予約権付社債とは、文字どおり新株予約権が付された社債なのですが、現在発行されるものはすべて「転換社債型」というもので、昔発行されていた転換社債(Convertible Bond.略してCB)と同じ性質のものです。新株予約権の行使に際して社債が出資にあてられるため、企業からすると、負債として計上していた社債が資本金(あるいは資本金と資本準備金)に、社債権者からすると、所有していた社債が株式に転換されるのです。 関西ペイントは6月1日、「2019年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債及び2022年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行に関するお知らせ」を開示しました。同日の同社株式の終値は2219円でしたが、翌2日は一時2009円まで値を下げました(高値も2152円)。 同社が発行した新株予約権付社債はリキャップCBと呼ばれるもので、調達した資金の一部を自己株式取得にあてることにしています。自己株式取得により自己資本が減るため、ROEを高めることができます。 それでも株価が下がったのは、投資家が株式の希薄化を嫌ったからでしょう。新株予約権付社債を発行した時点で株式の希薄化は生じませんが、将来、新株予約権が行使され、社債が株式に転換されて、株式の希薄化が生じる可能性があるのです。 関西ペイントの株価
その他の社債発行の場合
それでは、新株予約権が付かない普通社債発行の場合はどうでしょうか。こちらは株式の希薄化とは関係がありません。大和ハウス工業は6月1日「国内無担保普通社債の発行について」を開示しました。同日の同社株式の終値が3117円だったのに対し、翌2日は、高値が3171円、安値3078円となり、株価へのプラスかマイナスの影響は特に見られませんでした。 また、最近、劣後債を発行する企業が増えています(劣後債は、負債と資本の中間的な性質を持つため、ハイブリッド債とも呼ばれています)。劣後債は、元本と利息の支払順位が他の社債よりも低いため、利率が高くなるのですが、それでも、マイナス金利政策の影響により、低い利率での発行が可能になっているからです。そうした劣後債発行に関する適時開示の株価への影響にも、現在のところ一定の傾向を見てとることはできません。株価が上がる場合もありますが、下がる場合もあります。 なお、新株予約権付社債以外の社債の発行に関しては、適時開示が必要な事実とされていないため、特に発行額が大きな場合を除き、必ず適時開示が行われるわけではありません。 大和ハウス工業の株価