「資金調達」に関する適時開示で、株価は上がるのか、下がるのか?
増資(新たに株式を発行して資金を調達すること)や社債発行など、企業は様々な方法で資金を調達します。今回はその資金調達に関する適時開示と株価の関係について考えてみたいと思います。 なお、今回考えるのは、企業金融論の見地に基づく資金調達と株価の関係についてではなく、資金調達に関する適時開示を投資家がどう捉え、それにより株価が短期的にどう変化するかについてです。
「増資」に関する適時開示が行われた場合
増資を行うと、株式の希薄化が生じます。株式の希薄化とは、発行済株式総数の増加によって1株当たり当期純利益などが減少することをいいます。投資家はそうした株式の希薄化を嫌うため、増資に関する適時開示が行われると、通常、株価が下がります。 増資は、誰に対して株式を発行するかにより、(1)公募増資(不特定多数の者に対して発行)、(2)私募(第三者割当)増資(特定の者に対して発行)、(3)株主割当増資(既存株主に対して発行)、の3種類に分けられます。株主割当増資が行われることはまれで、私募増資は株式持合い目的などで行われます。純粋な資金調達目的で行われ、規模も大きいのは、やはり公募増資です。 その公募増資ですが、最近、数が非常に減っています。原因としては、株価が下がる可能性があるため、もともと企業が実施に対して慎重であることに加え、日本銀行のマイナス金利政策の影響により、低い利率での社債発行が可能になっていることや、コーポレートガバナンス・コードにおいて「収益力・資本効率等の改善」が求められたこともあり、企業が特にROE(自己資本利益率)を意識するようになっていること(増資を行って自己資本が増えれば、ROEは下がってしまう)などが考えられます。 そんななか、日本水産が8月19日、公募増資の実施などを内容とする「新株式発行及び株式の売出しに関するお知らせ」を開示しました。同日の同社株式の終値が525円だったのに対し、翌営業日の22日はやはり一時452円まで値を下げることとなりました(高値も468円)。 日本水産の株価