【承香院さんの五感で楽しむ平安ガイドVol.1 】当時の音色に焦がれて、琵琶を自作!?
平安時代の装束を身にまとい、蹴鞠や歌会、花見といった当時の暮らしぶりを楽しむ姿をSNSで発信し、話題となっている承香院さん。本誌1113号の京都特集では、五感で楽しむ平安の暮らしについて語っていただいた。その話を聞けば聞くほど、より深く知りたくなった編集部は、このたび平安文化を探索する承香院さんの連載をスタート。 第一回目は、先の京都特集では取り上げきれなかった興味深いエピソードを改めてご紹介いたします。
資料を見てもわからない、なら自分で装束を作ってみよう。
元々、愛知の城下町である犬山で育ち、歴史的な着物を目にするようなお祭りが幼い頃から身近にあったという承香院さん。その記憶がベースにあって、古い装束への興味が湧き、中学生くらいからカーテンを切って見様見真似で装束を手作りしていたのだという。 「国語の副読本である国語便覧を見ると、平安時代の装束を身につけているのが人形だったり、博物館で展示されているものも決まったポーズで固まっているわけです。これ、斜めから見たら?座ったらどうなるんだろう?と思っていたのですが、そうなると、もう自分で作るしかなくて。ドラマや映画では装束を着て動いているけれど、お手洗いのシーンもないし、突然雨が降ってくることもあまり長いシーンではない。雨の後はどうしたのだろうか、橋がない大きな川はあの装束でどう渡ったんだろうーー船では濡れるのでは?といった、さまざまな疑問が沸々と湧いてきたとき、やっぱり自分で試してみたいな、と」 自分で身につけていろいろ試してみたいという気持ちから、装束を縫うことはもちろん、ときには布を実際に染めることも。 「染めるために、鍋で時々布を煮たりもしています。染料を同じ量使って同じことをしても、その時々で全く違う濃さや風合になったりするんです」。 そうした苦労を経て実際に自分で装束を身につけてみると、さまざまな気付きがあった。
物語の描かれていない“あいだ”の部分が気になって。
「たとえば平安の人たちは楽器を弾いていますけれど、このような袖では実際に弾けないな、とか。そうすると普段着であった狩衣はこんな袖でよかったんだろうか、と袖丈に疑問を持って調べたり。袖の広さもこのくらいないと空気が通らず暑いな、ですとか。彼ら、このままよく寝てしまうんです、寝巻きに着替えたりせずに。布団がなくても寝られるような格好なんだな、と。実際にやってみると、記録や物語に描かれていない“あいだ”の部分が、こういうふうに過ごしていたんだなと見えてきたりするんです」 物語も映像も描かれているのはいつも切り取ったきれいな部分、そこでは見られない“あいだ”の部分にどうしようもなく惹かれてしまったという。