【韓半島平和ウォッチ】「トランプの米国」に臆する必要ない(1)
英国の進化生物学者、オックスフォード大のクリントン・リチャード・ドーキンス名誉教授は「ある集団で内部の敵を除去しようとする遺伝子が過度に発動すれば外部の脅威に対する感覚が鈍り、結局は集団自体が消滅することになる」と分析した(『利己的遺伝子』)。弾劾と国際秩序の再編過程で不確実性が高まっている韓国が2025年を迎えて銘記しなければいけない言葉だ。過去70年間にわたり韓国の安全と繁栄を支えてきた国際秩序が崩壊し、20日に発足する「トランプの米国」は警告音を鳴らしている。この渦中に安全保障と経済の対外依存度が世界最高水準の韓国は尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領弾劾などで国政が混乱した状態にある。 ◆トランプ氏に名分与えて実利追求する戦略 トランプ氏は政権発足前から2年後の中間選挙に出す「早期収穫」品目を狙う姿だ。トランプ氏は外交でウクライナ戦争と中東戦争、そして中国牽制に注力するだろうが、同盟関係も再設定するという。韓国とは防衛費、北朝鮮核問題、貿易・投資の3つの分野に集中するだろう。トランプ氏が望むものは同盟関係自体を変えるより「前任者ができなかったことを自分が成し遂げた」という成績表だ。 こうした内外の難関に直面した韓国政府の対外政策は厳しい。しかし果敢な姿勢で「超党外交」を駆使すれば突破の機会を作ることができる。弾劾政局がどこへ向かっても持続可能性が最も高いと判断される外交方策が必要となる。そのためにはトランプ氏の「筋肉質外交」に臆すことなく対処できるよう我々の政界が力を合わせなければいけない。超党性はその基礎となる。これを土台として米国に名分を与えながら韓国の利益を追求する戦略を用意することが求められる。 トランプ氏の攻勢が予想される防衛費の分担を見てみよう。1991年に韓米防衛費分担協定(SMA)が最初に締結されてから一貫してきた原則は、現地発生費用は最終的に韓国が負担するというものだ。現在はほとんど目標水準に到達している。トランプ氏が従来の分担計画を越えて無理な要求をする場合、米軍が韓国で韓国ウォンで購入する物資とサービスをすべて現物で直接提供すると逆に提案することが可能だ。トランプ氏としては「米軍を韓国に駐留させることで発生する費用を韓国が100%負担することにした」という成績表を提示できる。韓国としても軍事同盟の運用のために自国の役割を果たしているという名分を立てることができる。韓国の追加負担も従来の増額の流れから大きく外れないはずだ。 トランプ氏は韓国防御のための米軍訓練費用など年間数十億ドルを追加で出すべきだと主張した。これは米軍を傭兵に転落させる道だ。トランプ氏も米国のプライドを傷つけるという批判に背を向けることはできない。このため同盟に対して現金の代わりに自国の国防予算増額を要求する。増額の部分が主に武器の購買に使用されるため、米国は自国の「軍事費の縮小」と「武器輸出の拡大」という二兎を得ようとする。 ところが韓国はすでに国内総生産の2.5%を軍事費に投入している。同盟国のうち最高水準だ。トランプ政権1期目の4年間だけでも13兆ウォン分の米国産武器を購入した。韓国は米国武器の3大輸入国だ。こうした事情にもかかわらず「キャッシュマシーン」と言いながらお金を要求すれば、相互防衛条約を互恵的に運用する米国の意志が蒸発すると見なすしかないという点を強調するべきだろう。 北朝鮮の核問題もそうだ。米国にとって北朝鮮問題は優先順位が高くない。しかしトランプ氏は執権直後、北朝鮮の長距離核能力抑止と対北朝鮮制裁緩和をやり取りしながら韓国を疎外させるおそれがある。トランプ氏は「米国が北朝鮮の核から安全になった」と宣伝する可能性がある。しかし韓国が疎外された朝米交渉の結果は北朝鮮の核の脅威の下、米国の核の傘に依存して生存するしかないという不条理な構図として固着する可能性が高い。 このような場合、韓国は安保構図自体を変えるカードが必要だ。核不拡散体制(NPT)が許容する範囲内でウラン濃縮や再処理など核能力を最大限発展させる契機として活用することだ。トランプ政権の国防次官に内定したエルブリッジ・コルビー氏が著書『The Strategy of Denial』で提示したように、トランプの米国は「友好的核拡散」を通じて同盟国が一定の軍事的自立能力を備えるようにする可能性もある。同盟の核力量を拡大することで中国とロシアに対する牽制網を強化できるからだ。韓国はその範疇に適した同盟国だ。