【毎日書評】職場での希少価値が高まる。よりよい会議に導く「ファシリテーション」スキルの基本
「よい会議」を定義できていますか?
ファシリテーションについて考えるにあたっての大前提として、「よい会議」というものを定義しておく必要があると著者はいいます。「よい会議」を自分のことばで定義して、しっかりイメージを持つことが大切だということです。 どれが正しくて、どれが間違っているのかということではありません。人によっていろいろなイメージがあると思います。「良い」という表現は、相対的であり主観的です。なので、何と比べて良いのか、誰にとって良いのか、それらとセットで考えないと、「良い」が独り歩きをしてしまうのです。(25ページより) なお本書では「よい会議」を、「参加者から、あらゆる知識・知見・経験を集め、建設的な衝突を行うことで、全員が“納得できる解”をつくりあげる場」と定義しています。そしてそこには、3つのポイントがあるそうです。 1つ目のポイントは、会議にあらゆる情報を集めること。ファシリテーターは参加者から意見を引き出し、整理していく必要があるわけです。 2つ目は、論点ベースで互いの仮説をぶつけ合い、意見を昇華させること。いわば「建設的な衝突」です。 3つ目は、議論を経て出た結論に対し、参加者全員が納得できること。ただし、納得の前には“理解”というハードルがあるので、これがいちばん難しいかもしれません。しかも「よい会議」では、強引に意見を通すことは、あってはならないのです。 著者が「よい会議」を「参加者から、あらゆる知識・知見・経験を集め、建設的な衝突を行うことで、全員が“納得できる解”をつくりあげる場」と定義している理由は、いまの時代において、「唯一の正解」は存在しないから。 もし、“解”があるとすれば、それは現時点で「最も妥当な解」でしょう。会議において重要なのは、正解を模索する姿勢ではなく、議論を通して、最も妥当で、全員が納得できる解を抽出する姿勢なのです。(27ページより) だからこそ重要なのは、発言者の意見を全員が「理解」できるように、ファシリテーターが理解を“伝播”させること。ただしそれだけは不十分で、「理解」の先にある「納得」を促すためには、議論成果だけではなく、「どのようにして議論していくか」というプロセスが重要だといいます。 なぜなら人は、一方的に決められたことやいわれたことに対して、理解はできても納得はしにくいから。 けれども、自分がゼロから関わり、議論を重ねて決まったことなら納得できるはず。いわば、それがファシリテーションでもっとも重要な根本思想。したがってファシリテーターは、「人は、自分が関与してこなかったものには納得しにくい」ことを意識しておく必要があるわけです。(24ページより) ファシリテーションを聞くだけで「難しそう」だと抵抗感を持ってしまう方にとって、基本から応用までをわかりやすく解説した本書はきっと役立ってくれるはず。会議の質を上げるために、ぜひとも活用したいところです。 >>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験! Source: 総合法令出版
印南敦史