変動周期「23時間56分」で宇宙から届く謎の電波の正体はなんだったのか?偶然が生み出した天文学「電波天文学」
偶然の発見ふたたび!「パルサーの発見」
1967年8月6日、ケンブリッジ大学の博士課程大学院生だったジョスリン・ベルは、偶然、不思議なシグナルに気づきました。 当時、始まったばかりの電波天文学での観測中の出来事です。 宇宙のある方向からの周期1.337秒の電波シグナルを発見したのです。ベルは、電波望遠鏡(大型の電波受信機です)を用いて地球の上空かなたの電離層を研究しているなかで、この未知の電波を発見しました。 前述のように、この当時も、周期的な電波を出す天体現象など想像さえされていない時代でした。そのため、この電波は太陽系外の知的文明が発しているものではないかという説さえ登場し、リトル・グリーン・マン(欧米における宇宙人のステレオタイプである「小さな緑色の人間」)というニックネームでよばれたほどです。 しかし、その後の観測で、これがパルサーとよばれる天体からの電波によるものだと判明しました。 このパルサーについては、次の記事で詳しく見ていくことにしましょう。 このように偶然の積み重ねから電波天文学が誕生し、いまでは天文観測に欠かせない観測手段となっています。そして現在、「パルサータイミング法」によって発見された「ナノヘルツ重力波」の存在という、新しい宇宙観測への扉を開くきっかけへとつながっていったのです。 ---------- ----------
浅田 秀樹(弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授)