変動周期「23時間56分」で宇宙から届く謎の電波の正体はなんだったのか?偶然が生み出した天文学「電波天文学」
未知の電波は太陽系外から来ている!
こうして、ジャンスキーが発見した23時間56分周期で変動する電波信号は、太陽からのものではなく、遠方、つまり太陽系外の天体からの電波信号を地球の自転によって観測しているものだと判明したのです。 最終的に、その未知の電波信号は飛来する方向が特定され、銀河系中心(いて座)から発信されていることがわかりました。 1933年、ジャンスキーはその成果を論文として発表しましたが、当時は、多くの天文学者の関心を集めることはありませんでした。その後、彼はベル研究所で別の研究プロジェクトに移り、電波天文学(当時、この学術用語すら存在しなかった)に関わることは遂にありませんでした。 しかし、彼の業績を讃えて、電波天文学における電波強度の単位はジャンスキー(Jy)が用いられます。この単位は、電波で観測できる主要天体の電波強度を表現するのに便利なため、電波天文学ではワット(W)の代わりに好まれています。 電波天文学が天文観測の方法として重要であることが認識されるまでには、ジャンスキーの発見から25年ほどの時間がかかりました。 従来の天文学では、光を発する恒星、そしてその集団としての銀河が主な観測対象でした。可視光での観測なので、いわゆる光学望遠鏡が用いられます。恒星はその中心が高密度なため、核融合を起こし、その熱エネルギーで光り輝くのです。このことは、20世紀半ば、原子核物理学の研究によって明らかとなりました。熱エネルギーなので、恒星の表面の原子・分子はランダムに動き回ります。 一方、強い電波を発生させるためには、多くの電子を揃って運動させる必要があります。実際、電波を発するアンテナは、そうした目的の電気回路です。そんなアンテナが、自然界に存在するとは思えません。 したがって、ジャンスキーが未知の信号が宇宙から来ていることを発表した当時、すぐ近くにある太陽を除いて、星からの電波を観測しようとは考えられていなかったのです。