【プロの観戦眼35】大学時代からブレない島袋将の攻めの姿勢。ポジションを上げて叩くフラットは必見!~石井弥起<SMASH>
このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがすごい」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。第35回は、元デビスカップ日本代表でWOWOWテニス中継の解説でもおなじみの石井弥起氏に話を聞いた。 【連続写真】思い切って前に入って叩いた島袋将のバックハンドリターン『30コマの超分解写真』 早稲田大学庭球部監督である石井氏が推すのは、やはりこの人、この1、2年で大ブレークしている島袋将だ。4年間指導しただけに、島袋のどこがスゴイのか、大学時代とプロ転向後で何が変わったのか、一番熟知しているのが石井氏と言える。島袋の長所を尋ねると「何と言っても攻撃力です」と即答。 「どんな時でも自分からポイントを取りにいく。高い打点からフラット系でズドンと打ち下ろし、フォアもバックも、ダウンザラインも逆クロスも、一発で仕留められます。それがツアーレベルの威力を持っているのがスゴイんです」 そういう攻めの姿勢自体は「大学に入った時からブレていない」と石井氏は言う。ただ「1年生の時は身体ができていなかったし、技術も甘く、ショットが入らなかった」そうで、関東学生もインカレも早期敗退。「でも自分のテニスを貫く姿勢は、負けた試合でも常にありましたね」と振り返る。 それが年を経るにつれ実を結んでいく。攻めを貫いたことで強打の精度が上がってくると、学生の頂点に立ち、ITFツアーでも優勝を飾る。そして卒業後プロ転向。 「プロになってさらに技術がつき、身体もできて、攻めが磨かれました。またトミー嶋田コーチにスライスやボレーも教わり、武器の強打からネットプレーにも展開が広がった。それらが全て噛み合ったのが去年の活躍だと思います」。数10年にわたり大学出身プロが阻まれた四大大会本戦出場という壁を、島袋はあっさり越えてみせた。 島袋の攻撃の鋭さを実感するには“ポジション”をよく見るといいと石井氏は教えてくれた。「彼はどんな時でもポジションを上げます。ラリーで攻める時はもちろん、2ndサービスに対するリターンでは特にステップインして前で叩きます。ディフェンスでさえベースラインに近い。昔からそういう傾向はありましたが、今はより顕著です」。ぜひ注目してほしい。 ◆Sho Shimabukuro/島袋将(有沢製作所) 1997年7月30日生まれ。183cm、78kg、右利き、両手BH。四日市工業高 から早稲田大に進み、2017年にインカレ優勝。卒業後プロ転向し、持ち前のフラット系強打に磨きをかけ、23年にチャレンジャー大会で2勝。ウインブルドンと全米OPで予選を突破し、自己最高ATP135位をマークした。今季は9月に上海のチャレンジャーで優勝。11/4付けATP171位。 取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)