【宝塚記念】3着以下を11馬身突き放したクロノジェネシス 春のグランプリレースを「記録」で振り返る
異なる5名の騎手と挑み続けたヒットザターゲット
ディープインパクトが2着につけた0.7秒差は、阪神開催を含めても1986年以降で第3位の記録である。 2位の記録は1994年ビワハヤヒデで0.8秒差。ナイスネイチャやネーハイシーザー、サクラチトセオーといった実力派が集う中で、デビューから全レースで連対を続けていた前年の年度代表馬ビワハヤヒデは単勝1.2倍の圧倒的支持を得る。鞍上・岡部幸雄騎手に導かれ、好位から早めに仕掛けると、2着アイルトンシンボリらを置き去りにして5馬身差での圧勝だった。 そして、最大タイム差を記録したのが2020年のクロノジェネシス。なんと1.0秒もの差をつけて勝利をあげている。 前年は桜花賞とオークスで3着、秋華賞で1着の世代上位牝馬が前走の大阪杯2着を経て本格化。2着のキセキに6馬身、3着のモズベッロにはそこから5馬身と、3着以下に11馬身以上の差をつけて突き抜けた。 クロノジェネシスが2分13秒5でゴールする中、13頭が2分16秒以上を要してゴールするという結果だった。なお、クロノジェネシスは翌年も宝塚記念に出走。2着に0.4秒差をつけて連覇を達成した。 クロノジェネシス同様、連覇を達成したゴールドシップは3連覇を目指して2015年の宝塚記念に出走したが、大出遅れを喫して15着と惨敗。同一GⅠ・3連覇の偉業とはならなかった。 また、ゴールドシップの宝塚記念への挑戦は上述の3戦だったが、これよりも多く宝塚記念に挑戦をした馬は1986年以降で4頭いる。 挑戦回数2位タイとなる「4度出走」はステイゴールド、コスモバルク、キセキの3頭。キセキは2度の2着、ステイゴールドは2着1回、3着1回、4着2回と好走を続けた。 一方、最高着順が8着であり、他3戦は2桁着順だったコスモバルクだが、こちらは4年連続の出走だった他2頭と違い、間に未出走の年を経ての挑戦だった。 そして、最も多く出走したのがヒットザターゲット。実に5度も宝塚記念に出走した。 初出走は4歳時で、鞍上は古川吉洋騎手。翌年は福永祐一騎手、6歳では武豊騎手で挑戦。7歳シーズンは目黒記念の後に札幌記念へ向かったため未出走、8歳で小牧太騎手、9歳で川田将雅騎手と出走。5回全てが別々の鞍上であった。 ヒットザターゲットは6歳時に4着と好走するが、遂に馬券圏内へ食い込むことは叶わなかった。しかし、宝塚記念への挑戦を続ける傍ら、5歳時に京都大賞典を制覇(11番人気)、7歳時には目黒記念を制覇(11番人気)するなど、波乱の立役者として愛され続けた。まさに無事是名馬と言える。 18年ぶりとなる、京都での宝塚記念。どの馬も無事で怪我なく走り切ることを信じて応援したい。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん