新幹線の台車亀裂問題で川崎重工が会見(全文1)ほかの146台にも亀裂
公益財団法人鉄道総合技術研究所の調査結果
小笠原:では、本文のほうに、戻らせていただきます。括弧2、公益財団法人鉄道総合技術研究所さま、以下、鉄道総研さまが調査した結果、き裂の起点部分は、破面同士の接触により、表面がつぶれていましたが、内部を詳細したところ、溶接施工を含めた何らかの原因により生じた割れと考えられる破面が認められました。 括弧2、また、削り込みの補正と寸法調整のため、き裂が発生した近傍の軸バネ座の全面にわたり、肉盛溶接をした形跡が見つかりました。肉盛溶接は、一般的に補修に用いられる施工方法です。本部位は肉盛溶接後に残留応力を除去する工程を経るべきでしたが、その記録がないことから、軸バネ座近傍の、母材の疲労強度に影響を与えた可能性が考えられます。 2。き裂発生台車枠以外の、N700系台車枠の調査。JR西日本さま、JR東海さまのご協力の下、昨年12月26日より、き裂発生台車枠以外の、当社製N700系台車枠について、き裂発生部位の超音波探傷を含む調査を実施しました。超音波探傷は、目視では確認できない内部の微細のきずの有無や、大きさを確認することができます。 括弧1。側梁下面の板厚については、き裂発生台車枠以外にも、JR西日本さまで100台、JR東海さまで46台、合計146台で、7ミリ未満の箇所が見つかりました。 括弧2。当社製のN700系台車枠の超音波探傷の結果、微細のきずの疑いのあるものが、JR西日本さまで22台、JR東海さまで7台、合計で29台ありました。そのうち10台を割断して、詳細を調査したところ、全10台にきずの存在が確認されましたが、母材にまで達するような割れはありませんでした。確認されたきずは全て側梁下面と軸バネ座の溶接の範囲にとどまっており、台車枠の強度には影響しないことを確認しました。 括弧3。軸バネ座の全面肉盛溶接は、き裂裂発生台車枠以外では現時点では見つかっておりませんが、調査を継続中です。 3。き裂発生台車枠を含む台車枠製造における不備の原因と背景。側バリ下面の板厚が図面寸法どおりになっておらず、そのような製品が社内検査を経て、出荷された原因と背景は以下のとおりです。 括弧1。作業指示では、側バリと軸バネ座のすき間を目標 0.5ミリ以下、許容範囲1ミリ以内に調整してから、溶接で取り付けること。調整には、側バリを削ってはいけないことの両方を、作業指導票、図面を補完する資料で、製造時の重要事項、および、注意事項を作業者に伝達する書類にて規定していました。しかし、その規定を N700 系台車枠の製造時に徹底できていなかったのは、次のような背景や理由があったことが判明しました。 マル1。当社の品質管理が不十分であったため、外注品である側バリ部材、板厚8ミリの鋼材の曲げ加工精度にばらつきがあり、公差内であっても、結果として、軸バネ座を取り付ける側バリの下面が平面になっていない場合があり、側バリと軸バネ座との調整作業が必要でした。 マル2。作業指導票で指示されている2つの規定を両立しなければいけませんが、班長は社内の組立溶接作業基準、現行日本鉄道車輌工業会規格 JRIS W 0305、2011年版。台車部材の仕上げ方法と同等の溶接部位の仕上げ基準において、溶接ビード近接の母材は 0.5ミリまで削ることが許されておりますが、これを拡大解釈して当該作業に適用しました。さらに班長は作業者に側バリと軸バネ座のすき間を、がたがなくなるまで調整するよう指示した際、0.5ミリを超えて側バリを削ってはいけないと言及しませんでした。そのため、側バリ部材のプレス品の精度により、削り込み量が一定とならず、班長も作業後の現物の確認をしていませんでした。 括弧2。上記、括弧1の調査を通じて、品質管理体制に次のような問題点があったことが分かりました。 マル1。生産技術部門からの文書による作業指示が粗く、作業手順の多くは職場長・班長に任されていました。それらの粗い指示を補完するために、作業基準と作業指導票に従い作業が行われますが、作業に対する指導や教育も職場長、班長に任されており、実施、確認を追跡する記録がありませんでした。 マル2。当該作業指導票について、指示を守らせる範囲と現場に任せる範囲の区分、権限と責任が明確になっておらず、作業指導票を発行した生産技術部門は作業内容の確認をしていませんでした。 括弧3。き裂発生台車枠のき裂箇所の板厚確認は、品質管理部門が定める品質管理項目、および製造部門における自主検査項目のいずれにも含まれていないため、出荷までに確認しませんでした。社内での台車枠完成状態での検査項目は動力車用台車、これは、モーター付きの台車ということでございます。で、のべ248点、付随車用台車で、のべ208点に及びますが、側バリの板厚削り込みはもともと想定していなかったためです。 4。き裂の推定原因。重大インシデント発生後からこれまでの調査と分析・解析を通じて、き裂発生台車枠では、溶接施工を含めたなんらかの原因により生じた割れが存在していたと考えられます。ここを起点として、製造における不備により、側バリ下面の板厚を薄くしてしまったことで、き裂に至る進展速度が早まったものと推定されます。また軸バネ座の全面にわたる肉盛溶接等も、影響している可能性があります。き裂発生台車枠は運輸安全委員会さまの管理の下、き裂発生の原因の特定や、進展メカニズムの詳細調査を続けており、今後も当社は全面的に協力し、真摯に取り組んでまいる所存です。 5。再発防止。これまでも品質の確保と向上のために、作業者への品質教育の強化、生産職場の監督、責任者である職場長や班長のノウハウの書面化、側バリ用プレス品を含めた、外注品の品質管理の見直し等の改善活動に取り組んでまいりましたが、あらためて、品質管理体制を再構築し、徹底的に再発防止に努めます。最終的なき裂発生原因は特定されておりませんが、当面の対策は次のとおりです。 括弧1。車両カンパニープレジデント、これは私のことでございます。を、筆頭とする品質管理委員会、仮称、を設立します。この委員会では、各製品の製造部門での自主点検項目、品質管理部門による検査項目の追加等、製造、品質管理における問題や懸念をあらためて調査し、是正します。外部専門機関、および当社航空宇宙部門や技術開発部門の知見を取り入れ、図面指示どおりになっていない製品が出荷されない仕組みを確立します。 括弧2。品質保証本部による初品製造過程におけるチェックポイントを増やし、その後の製品のフォローアップ検査の充実を含む品質管理体制の強化に加え、製造部門である生産本部に、品質管理部門を新設し、工程内のプロセス確認、作業指導票を含めた書類監査、作業者の教育内容を刷新します。 括弧3。Kawasaki Production System。安定した品質確保のために、誰が行っても同じ品質が確保できる標準作業と、その標準作業を守る職場規律を確立することを目指す当社の活動、でございますが、の遵守を徹底し、品質確保を目的として、標準化、技能伝承育成、職場規律順守、現場力向上を図ります。本件については、もうすでに実施中でございます。 設計・品質に関わる情報の周知徹底を再度図るとともに、安全が最優先される鉄道事業者さまへ納入する鉄道車両であるという意識を再徹底し、作業に携わる全員がこれまで以上に1つ1つの作業の意味の認識と、社会的使命感をもって、鉄道車両製造に取り組むよう推進します。 6。他の車両の台車枠。N700系新幹線以外の他の国内外を含む新幹線、在来線車両の台車枠は、構造、形状、製造方法が異なること、製造管理部門において、作業指導票どおりに作業が実施されていることを品質確認指示書、チェックリスト、により確認し、図面指示どおりに作業を行っていることを確認いたしました。 7。当社の対応。括弧1。き裂発生台車枠と同じ仕様で、当社が製造しましたN700系台車枠につきまして、全数点検による測定で、側バリ下面の板厚が図面指示の 7ミリを下回っていることが判明した台車枠を交換させていただきます。なお側バリ下面の板厚が7ミリを下回っていない場合でも、当社の製造不備に鑑み、超音波探傷によりなんらかの傷が存在することが疑われる台車枠についても、当社の判断で交換させていただきます。 括弧2。今回判明したことを受けて、社長が全カンパニーにおいて、技術要求から展開された作業指示が確実に順守されているか。現場のみの判断で、作業指示から逸脱した製造が行われていないかについて、緊急調査を指示し、現時点では同様の問題がないことを確認しています。さらに二度とこのようなことが起こらないよう、全社品質管理委員会、仮称、を立ち上げ、外部視点を取り入れるなどの継続的な調査・確認に取り組み、当社グループを挙げて、品質管理の徹底を推進してまいります。以上でございます。 司会:当社からのご説明は以上でございます。 【連載】新幹線の台車亀裂問題で川崎重工が会見 全文2へ続く