国交省は「物件情報の囲い込み」に規制強化も…不動産業界でより巧妙化する“裏金づくり”の手口(小野悠史/ニュースライター)
【不動産業界 噂の現場】 「なぜ今までこれが処分対象ではなかったのか」。世間からはそんな声も上がっている。 【写真】石田ゆり子の資産総額は7億円! 54歳で独身貫く“美しすぎる不動産女王”の気になる今後 1月から国土交通省は「物件情報の囲い込み」を新たに処分の対象に加えた。「囲い込み」とは、売り主から物件を預かった不動産業者が情報を独占し、自社で買い主を見つけ両手取引を狙う行為のこと。両手取引なら手数料が最大で倍に増える。 一部の業者による悪質な商慣行は、長年、業界の課題とされてきた。物件情報を長期間抱え込み、特定の宅建業者に市場価格を下回る価格で売却。その見返りとして営業社員がキックバック(不正な裏金)を受け取るといった取引も水面下で横行しているといわれる。売り主には「今の価格では買い手が見つからない」などと言って、安値に誘導するのである。 2023年には、大手不動産会社の幹部による不正な取引が発覚した。この幹部は、売り主から仲介を依頼された物件を、馴染みの不動産会社に相場を下回る安値で売却。その差額の一部をキックバックとして受け取っていたが、収入を申告していなかった。この不正に対して国税は申告漏れを指摘したものの、それは税務上の処分にとどまった。不動産取引の適正性を監督すべき宅建業法上の処分は行われなかったため、幹部は会社から解雇後すぐに不動産業者として独立開業している。 業界関係者は「実はこのとき、別の大手不動産会社の幹部も国税から裏金分の申告漏れを指摘されたそうです。しかし、家族を代表にしたダミー会社を経由させていたため勤務先への発覚は免れ、今も元気に営業しています(笑)」と業界の呆れるほかない内情を明かす。 ■売り主の監視機能も強化 今回の規制強化は不動産業者に対し、物件情報を共有するシステム「レインズ」での取引状況の正確な登録を義務付ける。「商談中」や「成約済み」といった虚偽の表示で物件を囲い込む行為は処分対象となる。 また、売り主の監視機能も強化する。物件登録時に売り主へ交付される証明書にQRコードが追加され、売り主が自身の物件の取引状況をオンラインで随時確認できるようになった。これで不動産業者による恣意的な情報操作が困難になると行政は考えている。 他人の財産を不当に安く売り払って私腹を肥やす行為は犯罪的で、決して許されない。今回の規制強化で業界の正常化が一歩進むのであれば歓迎すべきだが、事はそう簡単ではない。 「最近では不動産ポータルサイトで物件を公開しながら、写真の量や質を制限して、問い合わせを減らすなど手法が巧妙化しています。根の深い問題です」(都内不動産会社) 新春の不動産業界、改革元年となるか。 (ニュースライター・小野悠史)