日本の宇宙開発にとって2024年は「実り多き一年」 イプシロンSロケット燃焼実験失敗とロケット開発の行方は?
<ロケット開発に伴う「産みの苦しみ」>
もっとも、幸いなことに、一時は燃焼異常を起こしたイプシロンSロケットの第2段モータとシナジーのあるH3 ロケット用の固体ロケットブースタへの影響に関しては、JAXAは11日に「一部の共通点(点火装置であるイグブースタと材料の一部)を含めて、これまでのH3の地上燃焼試験等の開発結果および 4 号機までの飛行結果を再評価したところ、懸念事項はない」と発表したため、H3の今後の打ち上げスケジュールには影響がない見込みです。 ロケット開発には多くの「産みの苦しみ」を伴います。12月は国内初の民間企業単独による人工衛星の軌道投入を目指す民間小型ロケット「カイロス2号」(スペースワン社)の打ち上げも予定されていますが、14日、15日と強風のため打ち上げ延期となりました。 関係者は「ロケット発射場(和歌山県串本町)の上空の風が強く、ロケットは横からの風に弱く破損する可能性があるから」などと説明し、打ち上げは18日に再々設定されました。初号機は今年3月、推進力不足で打ち上げ直後に爆発しており、万全を期して再挑戦しているということです。 政府は2030年代前半までに「官民合わせて年30回のロケット打ち上げ」を目標として掲げています。打ち上げ前の試験での失敗や打ち上げ延期は「悪いニュース」のように聞こえがちですが、「ベストを尽くすための必要な足踏み」と言えるでしょう。来年は、さらに信頼性を増した機体や打ち上げを数多く見守りたいものです。
茜 灯里(作家・科学ジャーナリスト/博士[理学]・獣医師)