日本の宇宙開発にとって2024年は「実り多き一年」 イプシロンSロケット燃焼実験失敗とロケット開発の行方は?
<ロケット開発の歴史とイプシロンSの位置付け>
日本のロケット開発は1955年、東京大学生産技術研究所によって開発された長さ23センチ、直径1.8センチの通称「ペンシルロケット」から始まります。 その後、固体燃料を使う比較的小型なロケットと、液体燃料を使う大型ロケットの2系統が、基幹ロケットとして発展していきました。 固体燃料ロケットでは固体推進剤が一気に燃えるため大きな推進力が得られますが、燃焼制御が難しく推進力は長く続きません。それに対して、液体ロケットは液体推進剤の量の調節が容易なので、推進力を止めたり複雑な制御をしたりしやすいという特徴があります。 そこで一般に、大きな初速度が必要な場合や比較的小型のロケットには固体燃料ロケット、精密な軌道投入を行う場合や大型ロケットには液体ロケットが使用されます。 固体燃料ロケットは「ペンシルロケット→ベビーロケット→カッパー(K)→ラムダ(Λ)→ミュー(M)」と名付けられてきました。 <国際競争力の強化に向けて> イプシロンロケットは、66年から06年まで長年にわたって活躍したミューロケットの後継に当たります。イプシロン (Ε) の名称は、カッパーロケット以降、名前にギリシャ文字が使われてきた伝統を受け継ぎました。「Evolution & Excellence(技術の革新・発展)」「Exploration(宇宙の開拓)」「Education(技術者の育成)」の頭文字にも由来すると言います。 13年に打ち上げを開始したイプシロンおよび強化型イプシロンロケットは、22年の6号機まで運用されました。しかし、6号機の打ち上げ失敗で搭載した8機の人工衛星を喪失してしまったため、いったん運用を終了してイプシロンSとしてバージョンアップする予定です。なお名称は「イプシロンS初号機」とはならず、「イプシロン7号機」などと従来の名称を引き継ぐ見込みです。 「イプシロンS」はJAXAとIHIエアロスペース(東京都)で共同開発した、全長およそ27.2メートルの3段式のロケットです。イプシロンSの「S」にはシナジー(Synergy, 相乗効果)の意味も込められており、H3ロケットの固体ロケットブースター(SRB-3)と生産を共通化することでコストを低減し、打ち上げの頻度を高めることで、世界的に需要が高まる小型衛星打ち上げビジネスへの参入において国際競争力を強化することを目指しています。