「体重計から始まった」 タニタに聞いた 日本人の健康意識“進化の歴史”
THE PAGE
昨年発表された2015年の日本人の平均寿命は、男性80.79歳、女性87.05歳、日本は世界トップクラスの長寿国として知られています。しかし戦後間もない1950年の日本人の平均寿命は男性58.0歳、女性61.5歳で、今より22~25年以上短いものでした(厚労省簡易生命表)。その間に、日本人の健康意識はどのように変わったのでしょうか。体脂肪計の販売などで知られる株式会社タニタ(本社東京・板橋区)で話を聞きました。
アメリカから持ち帰ったバスルームスケールがきっかけ
同社企画開発部主任研究員、西澤美幸さんに案内されたタニタ本社内にある博物館。同社が手がけた体重計や体脂肪計などの商品がずらりと陳列されています。入り口すぐ、表面のエンジ色の色使いと側面の金属仕様の色合いが懐かしい体重計が目を引きます。「こちらが第1号のヘルスメーターです」(西澤さん)。 初の家庭用体重計、第1号ヘルスメーターが発売になったのは1959(昭和34)年。当時の谷田五八士社長(社名は谷田製作所)が、米国視察から、「バスルームスケール」と呼ばれる体重計を持ち帰ったのがきっかけでした。この年、皇太子(現在の天皇)ご成婚に沸き、前年に初めて1万円札が登場するなど、日本は高度経済成長の真っただ中。「これからは自宅にお風呂が造られるようになる。そうすれば、アメリカのように浴室に体重計を置くようになる、と考えたようです」と西澤さんは説明します。 思惑通り、銭湯で風呂上がりに大きな体重ばかりを使うという生活様式から、浴室がある家庭の増加と同時に、ヘルスメーターも普及。発売開始からおよそ10年後の68(同43)年には生産台数100万台突破し、体重計で健康チェックという習慣が日本人に浸透していきました。 そのころ同社では、ヘルスメーターだけでなく、オーブントースターや電気ストーブ、電池式ポケットライターなども製造していたといいます。しかし、徐々に「はかるもの」の進出を広げ、87(同62)年に就任した前社長の谷田大輔氏が「健康をはかる事業」の方針を明確化。好調だった電子ライターの製造からも「喫煙は健康事業に取り組む方針とそぐわない」という理由で撤退し、代わりに「体の中身をみる」体脂肪計の開発などに注力しました。