「夫のスペック=女性の価値」? アルコール依存症のハイスペ夫を必死で支え…不妊治療中の“勝ち組”妻が陥った共依存の闇
高学歴・高収入で優しく、はた目にはハイスペに見える夫。だが、その夫がアルコール依存症だったら? 人もうらやむ“勝ち組”主婦は、実はさまざまな闇を抱えていた…。身近な依存症をテーマにしたオムニバス漫画『満タサレズ、止メラレズ』で描くのは、そんな夫婦の物語。アルコール依存に先の見えない不妊治療、そして共依存。たくさんの問題をはらんだストーリーについて、作者の駒井千紘氏に聞いた。 【漫画】「まさかハイスペ夫に限って…」“勝ち組妻”に大誤算! 夫の異常行動とは? ■まさかエリートの夫が? ステレオタイプに描かれた「昭和のアル中おやじ」の弊害 女性の生きづらさと依存症の関連性をテーマにした、オムニバス漫画『満タサレズ、止メラレズ』(コミックシーモア (C) 駒井千紘/ソルマーレ編集部)。現在、本作を元にしたドラマも放送中だ(ABCテレビ 毎週日曜 後11:55~)。コミック8~10巻では不妊治療に向き合う夫婦の物語を描いているのだが、その夫がアルコール依存症に陥るという内容だ。 主人公は「友人たちのように美人でもなければ、バリキャリでもない」を自認する女性。だが、大手企業に勤めるエリート男性と結婚して人生が逆転。真面目で優しくイケメンな夫を得た彼女は、勝ち組妻として友人たちから羨ましがられる。しかし夫は、「仕事のプレッシャーを飲酒で紛らわせる」といった問題を抱えていた──。 「アルコール依存症というと、昔からマンガやドラマで『貧困家庭のお父さんが一升瓶を抱えて奥さんや子どもに暴力を振るう』といったステレオタイプで描かれてきました。しかし実際は、真面目で社会的地位のある人にも多い深刻な病気です」 アルコールは違法ではないものの薬物の一種で、過度な飲酒は確実に体を蝕む。耐性は人それぞれのため依存か否かの線引きは難しいが、手が震えるなどのわかりやすい症状が出なくても、人間関係や社会生活に悪影響が及んだら依存症を疑っていい。 「“アル中おやじ”的なステレオタイプで描かれてきたがゆえに、周囲の人も『ただの飲み過ぎ』と見過ごしたり、当事者も『自分は決してアル中ではない』と否定して、治療が遅れてしまうのが怖いところです。ハイスペ男性を当事者に描いたのは、『だらしない』『意思が弱い』といった昭和なイメージで語られがちなアルコール依存症の誤解や偏見を払拭し、フラットにとらえていただきたかったからでした」