アサド大統領がロシア亡命、政権は崩壊 複雑な利権絡み合うシリア、円滑な体制移行なるかが今後の焦点
ロシア国営メディアは8日、ロシア大統領府の関係者の話として、シリアのアサド前大統領が人道的な理由で亡命を認められ、家族とともにモスクワに到着したと伝えた。 シリアの反政府勢力は8日、首都ダマスカスを掌握。50年余り続いたアサド一族による体制が崩壊した。ロシア外務省は、アサド氏がこれを受けてシリアを去り、平和的な政権移譲を指示したと発表していた。 だがイスラム主義者から米、ロシア、トルコとつながりのあるグループまで、複雑に競合する利害関係を抱えるシリアで、円滑な体制移行は困難を極めそうだ。また反政府勢力の一部は国際社会からテロ組織に指定されているものもあり、こうした勢力の影響を受けるとみられる新政権と、どう向き合うかが西側にとっての課題だ。 8日、反政府勢力が首都ダマスカスを制圧し、アサド大統領の追放を宣言すると、市内全域で祝賀の銃声が鳴り響いた。13年以上続いた内戦を経て、アサド一族の強権的な統治は終焉を迎えた。これは中東にとって大きな転機となる。 1週間前に突然進撃を開始した反政府勢力は8日、国営テレビで「暴君」を追放したと発表した。シリア反政府勢力連合は声明で、完全な執行権を持つ暫定統治機関への権力移譲を完了すべく取り組んでいると述べた。そのうえで「偉大なシリア革命は、アサド政権を打倒するための闘争の段階から、国民の犠牲にふさわしいシリアを共に築くための闘争へと移行した」とした。 シリア軍筋によると、これまでいかなる反対派も許さなかったアサド大統領は8日早朝、ダマスカスを脱出した。ロシア外務省はその後声明を発表し、アサド大統領は平和的な権力移譲を命じた後、国を離れたと発表した。 アレッポなどの都市で人々が政権崩壊を祝う中、シリアのジャラリ首相は、移行期間の国政運営について協議するため反政府勢力のゴラニ司令官と連絡を取っていると述べた。これはシリアの政治的未来を形成する取り組みにおいて注目すべき進展だ。首相はまた、シリア国民が望む指導者を選べるよう自由選挙の実施を呼びかけた。 またアサド大統領の失脚は、この地域におけるロシアとイランの影響力に大きな打撃を与える。両国は、シリア内戦でアサド大統領を支えてきた。事態の進行の速さはアラブ諸国を驚愕させ、地域の新たな不安定要因に対する懸念を引き起こした。 数十万人の犠牲を出した内戦で荒廃したシリアは、転換点を迎えた。内戦はさらに何百万人もの難民を生み出した。8日、レバノンやドイツなど国外に逃れたシリア難民の人々は歓喜の声を上げた。 西側諸国は長年、アサド政権とは距離を置いてきた。反政府勢力の一部は国際社会からテロ組織に指定されているものもあり、こうした勢力の影響を受けるとみられる新政権と、どう向き合うかが西側にとっての課題だ。 ゴラニ司令官率いるハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)は最大の反政府勢力である。同組織はイスラム過激派組織アルカイダの元関連組織であり、国民の一部からは、同組織がイスラム主義的な厳格な統治を課すのではないかと懸念する声も上がっている。