追悼・中尾彬さん 映画出演にも“ねじねじ” 生涯貫いたダンディズム
【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1183回】 シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。 2024年5月22日、俳優の中尾彬さんが5月16日に死去していたことが明らかになりました。享年81歳。妻の池波志乃さんが発表したコメントによると、体調を考慮しながらも最近までお仕事してらっしゃったとのこと。あまりにも突然の出来事に、私もただただ驚くばかりです。 そこで今回は、中尾彬さんをクローズアップ。映画出演作とともに、中尾さんの俳優としての魅力を深掘りします。
映画、ドラマ、バラエティー番組で活躍 愛妻家の個性派俳優
1961年、日活第5期ニューフェイスに合格し、俳優の道を歩き始めた中尾彬さん。テレビドラマ「暴れん坊将軍」では、徳川宗春役が当たり役に。この役はシリーズを通じて西岡徳馬さん、成田三樹夫さんと3人の俳優さんが演じており、中尾さんはその初代にあたります。 映画では『極道の妻たち』シリーズ、『ゴジラ』シリーズ、そして『ミンボーの女』など、数々の話題作に出演。熱血司令官にコワモテのヤクザ、気立ての良い親分など、それぞれのキャラクターを変幻自在に演じ分け、作品の魅力を一層引き立たせる活躍をみせました。
そして中尾彬さんと言って忘れてはならないのが、北野武監督作品。『アキレスと亀』(2018年)『アウトレイジ ビヨンド』(2019年)、そして『龍三と七人の子分たち』(2015年)と、3作品に出演。 私が特に印象に残っているのは『龍三と七人の子分たち』です。オレオレ詐欺の被害に遭って憤慨した元ヤクザの組長が、かつての子分たちを引き連れて大暴れ。「若い者に勝手な真似はさせられねぇ」とばかりにジジイたちが世直しに立ち上がる、痛快コメディです。 そんな本作で中尾さんが演じたのは、はばかりのモキチ。蝶ネクタイに派手なスーツ。ジェントルマンに見せかけながら、小銭をせびる寸借詐欺で生計を立てているというジジイ、もとい、元ヤクザのおじいちゃん。 全編にわたってブラックユーモアにあふれた本作ですが、その中でも中尾さん演じるモキチに関わるシーンは、どれも強烈。「あの渋くてダンディな中尾さんが!?」と驚愕しながらも、抱腹絶倒したものです。