新型シトロエン・ベルランゴは、“フワリフワリ”なミニバンだった 異次元感覚の最新モデルとは?
作りの良いボディ
このクルマのいいところは、使い勝手にある。1498cc4気筒ディーゼルエンジンは、96kWの最高出力と300Nmの最大トルクを発生。全長4405mm、全高1830mm、車重1600kgの5人乗りモデルには、十分すぎるパワーだ。 アクセルペダルを軽く踏んだだけで、即座に加速に移る。エンジンはディーゼルだが、どちらかというと、回転で稼ぐようなタイプで、回していくと(けっこう気持ちよく回転が上がる)グングンと力が出てくる。まるでガソリンエンジンのようで、なかなか楽しい。 ドライブモードも備わっていて、ノーマルないしはエコが選べる。クルマの特性に慣れていないうちは、ついアクセルペダルを踏みこみすぎて、思った以上の加速感に面くらいがちだ。そこで私は、しばらくエコで走ってから、後にノーマルで走るようにした。 ノーマルモードだと、300Nmもの最大トルクのおかげで、交通の流れにしっかりキャッチアップできるし、場合によってはリード可能だ。 ステアリングフィールは中立部分がやや甘めで、しかもスピードがゆっくりだ(曲がるときは大きく回さなくてはならない)が、サスペンションストロークの長さを感じさせる“フワリフワリ”と動くボディと、上手くバランスがとれている印象だ。 「クルマの快適性を100年以上にわたって追求してきた」と、謳うシトロエンでは、ベルランゴにも「アドバンストコンフォートシート」なるシートを採用。特徴は、中央部は柔らかく、サイドサポート部はしっかりとした感触を持つ構造にあるとされる。 私はこのシートが好みで、70年代までのシトロエン車のソフトさではないものの、確かに“フワリ”という感じの座り心地と、走行中にからだをサポートしてくれる機能を両立させているのが良いと思う。 インテリアでは、天井の「モジュトップ」が継続採用されているのが嬉しい。パノラミックガラスルーフと、多機能ルーフストレージをひとつにしたもので、後者のストレージは「フローティングアーチ」と呼び、約14リッターもの容量を確保。その恩恵で、ここにさまざまなモノを収納可能だ。車内では手荷物の置き場に困ることが多々あるだけに、利便性の高い機能である。 私がベルランゴで感心するのは、上記のような使い勝手のよさと、さらにもうひとつ。ボディのつくりのよさだ。後席用スライドドアの開閉時、一切ガタピシ感がなく、見事な剛性感でもってスライドドアがぴしゃりと閉まるので、実に気持ち良い。頼りになる感じといってもいい。 燃費はリッターあたり18.1km(WLTC)と発表されている。荷物をたっぷり載せて、どこまでも走っていけそうな、良きパートナーだ。クルマは生活のための道具とするフランス流ミニバンの改良版は、日本でも評価されるだろう。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)