センサーなのに電源不要、漏水を検知して通知 「潜在的に大きな市場」老朽化建物の管理向け狙い売り上げ増
ミネベアミツミ(長野県北佐久郡御代田町)子会社で半導体メーカーのエイブリック(東京)が、「バッテリーレス漏水センサー」の販売に力を入れている。半導体技術を生かし、電池を使わずに漏水を検知できる製品として2019年に市場投入。ビルや工場といった施設の老朽化対策や省人化のニーズなどを取り込み、25年3月期には同製品の売り上げを前期に比べ4割引き上げる目標を掲げる。 【写真】バッテリーレス漏水センサーを設置した配管。黒い帯状のセンサーリボンが濡れると発電する
■帯状の「センサーリボン」と無線タグで構成
同社の「クリーンブースト」技術を核とする。それぞれは極小すぎて活用できない電気を集め、使用可能な状態にする「蓄電・昇圧」を担っているのが半導体回路技術だ。
同センサーは、帯状の「センサーリボン」と無線タグで構成し、バッテリーなどの電源は付属しない。配管などにリボンを巻き付けるように設置する。漏水があった場合、リボンに織り込んだ金属の電極が水と反応すると、微弱な電気が生じる。それらを蓄電・昇圧して、無線通信で連絡する仕組みになっている。0・15ミリリットルのわずかな水滴から検知できるという。
リボンは5メートル、2メートル、0・5メートルの3種類あり、コネクターで接続して延長することも可能。通信するタグには固有のID(識別番号)があるため、複数設置した場合もどこで水が漏れているか正確に把握できる。
■システム業者やスーパーゼネコンに供給
近年、築年数が古いビルや商業施設などが増え、維持・管理が課題になっている。こうした老朽化施設の漏水被害対策の必要性などから、同社は潜在的な市場は大きいとみる。システム業者やスーパーゼネコンなどの漏水検知システムに製品を供給している。
新型コロナウイルス下で低迷した時期もあったが、認知度が向上するなどし、売り上げを伸ばしている。現在、同センサーを採用しているシステム事業者は全国の約40社といい、今後1、2年で倍増を目指す。
■牧場で母馬の出産前の破水検知を実証実験
漏水対策にとどまらず、新たな用途での展開も目指している。農業機械販売会社などと連携して、北海道の牧場で母馬の出産前の破水などを検知、生産農家に通知するシステムの実証実験に取り組んでいる。農家の負担軽減などにつなげる狙いがある。