鹿児島県警の「受け渋り」は昔から?…詐欺被害を訴えても、南署は取り合わず「個人間の貸し借りだ」
鹿児島県警は現職警察官らの不祥事が相次ぎ、その後の対応も県民が納得できるものとは言えず、信頼を失った。野川明輝前本部長による隠蔽(いんぺい)疑惑まで浮上し、組織そのものに不信の目が向けられている。一連の不祥事は、メディア捜索の是非や公益通報の適否、公安委員会制度の課題などさまざまな論点も浮き彫りにした。(連載「検証・鹿児島県警第1部~欠けた県民感覚②」より) 【関連】検証・鹿児島県警 ストーカー、盗撮…現職警官は警察情報を悪用した。軽い処分、透けるおごり…憤る被害側「信頼はゼロだ」
県警は10月末、詐欺など三つの事件で不適切な相談対応や事件処理があったとして、現職警察官延べ38人を一斉に処分した。通例なら公表しないが「県民の関心が高いため例外的に」発表した。 頼りにしていたのに-。詐欺に遭った被害者の一人で、県内に住む50代女性は、2年前に鹿児島南署で受けた対応に悔しさをにじませる。 銀行員を装った50代の男から複数回にわたって計2000万円以上だまし取られたとして、署に3回相談した。ところが、「個人間の貸し借りだ」「詐欺事件にはならない」などと取り合ってもらえなかった。「まるで人ごと。話を聞いてくれる人が一人でもいてほしかった」と振り返る。 女性は納得できず、別の署に出向いた。すると捜査が始まり、男は逮捕された。「同じ県警なのに、なぜ対応に差があるのだろうか」。その疑問は膨らみ続けた。 ■ □ ■ 南署はどう処理したのか。女性が情報開示請求して出てきた「苦情・相談等事案処理票」には、「(女性が)『近場の弁護士を頼ろうと思います』と申し立てた」と、身に覚えのない記述があった。他にも相違があり、後に県警も正確性を欠いたと認めた。
女性は対応した男性警察官からの説明を求めているが、実現していない。「県民に寄り添うべきなのに、体裁を気にしているように感じる。つらい思いをしている人が他にもいるのでは」と憂慮する。 このような事案も踏まえ、県警は8月、不祥事の再発防止策を策定した。「抜本的で網羅的な対策になる」と強調し、相談や苦情への対応強化も盛り込んだと説明した。 公表した対策には、相談対応について「相手の心情に配慮しつつ誠実な対応がなされるよう、警察署への巡回指導を強化する」と記してある。 ■ □ ■ 女性は男性警察官を3月に告発。県警は再発防止策の公表と同時期に、虚偽公文書作成の疑いで鹿児島地検に書類送検した。 男性警察官は10月末の処分対象者の一人となったが、女性には県警から処分内容について連絡がなかった。捜査は続くが、女性の気持ちは晴れていない。「本人に直接謝ってほしいだけ。謝罪さえあれば大ごとにはしなかった」
女性への対応は「受け渋り」と呼ばれ、県警ではこれまでも複数あったことが明らかになっている。同月下旬の記者会見で問われた中野誠刑事部長は「これまでも即時受理に努めてきたが、指摘や意見を踏まえ、捜査員の意識改革に取り組む」と述べた。 他方で、こんな昔話を打ち明ける県警幹部もいる。「告訴や告発はなるべく穏便に断らないと、受け付けたら先輩から嫌な顔をされた。もう改善されていると思うが、そんな名残があるのだろうか」
南日本新聞 | 鹿児島