【犯罪被害者支援】市町村で条例化進めて(8月27日)
犯罪被害者基本法が制定されて20年を迎える中、関連条例を定めた県内の市町村は半数以下の23市町村にとどまっている。刑法犯の認知件数は2022(令和4)年を境に増加に転じている。被害を受けた当事者やその家族を少しでも手助けできるよう、環境整備に努めてほしい。 条例は、犯罪被害者の相談対応や日常生活への支援策、支援に関する情報提供などが基本的な施策として盛り込まれている。警察庁の2023年版犯罪被害者白書によると、条例を設けているのは本県を含む46都道府県、13政令指定都市、606市区町村に上る。東北地方の宮城、秋田、隣県の栃木を含む11府県は全市町村で整えている。 県内で制定した23市町村は、被害者と家族を対象にした見舞金制度を掲げている。条例は設けていない会津若松、郡山、いわきなど10市町村も見舞金制度を導入している。残る26市町村はいずれも未整備となっている。 県は説明会を開くなどして市町村に対応を促してきた。しかし、条例化への機運醸成や業務過多による人員難など、さまざまな事情から進んでいない。医療や福祉、心理分野などの有識者でつくる県犯罪被害者等支援施策推進会議では、早急な条例制定を求める一方、支援水準にばらつきがある現状を問題視する意見も出ている。
行政や警察と連携して支援活動に当たるふくしま被害者支援センターへの昨年の相談支援件数は941件で、前年から約2倍に増えている。旧ジャニーズ事務所の性加害問題を契機に、被害体験を胸の内に留め置かず、公表する機運が高まっているのが要因の一つとみられる。ただ、対応する職員は慢性的に不足している。被害者支援に対する社会の理解や関心を広げ、人材確保につなげる必要がある。 東北在住の犯罪被害者遺族の交流会が今年6月、県内で初めて開かれた。郡山市の女性は15年前、トラックの居眠り運転で、息子のようにかわいがっていたおいを亡くした。「何年たっても悲しいものは悲しい。同じ思いを持つ人に話したことで気持ちは少し軽くなった」と明かした。こうした交流会を定期的に各地で開き、被害者や親族が思いを寄せ合う機会も設けていきたい。(渡部純)