社説:ICCと日本 「法の支配」へ支援強化を
国際的な法の支配を守るため、日本をはじめ加盟国を中心とする広範な支えが必要だ。 戦時・紛争時の戦争犯罪や人道に対する罪などを裁く国際刑事裁判所(ICC)がパレスチナ自治区ガザ攻撃を巡り、イスラエルのネタニヤフ首相らに戦争犯罪などの容疑で逮捕状を出したことに対し、後ろ盾の米国が反発している。 赤根智子所長が年次総会で演説し、米国によるICCへの圧力や、職員への脅迫などで「攻撃や脅迫、圧力に直面している」と強い危機感をあらわにした。 ネタニヤフ氏らへの逮捕状は先月、飢餓を用いた戦争犯罪と殺人、迫害など人道に対する罪の疑いで出された。経緯を見れば当然である。加盟124カ国・地域は逮捕や身柄引き渡しの義務を負い、同氏の外交活動は制約される。 赤根氏の言う「あたかもテロ組織かのように、国連安全保障理事会で厳しい経済制裁をちらつかされている」のは、ゆゆしき事態と言わざるを得ない。 ICCは1990年代の旧ユーゴスラビアの民族紛争やアフリカ・ルワンダでの民族対立による虐殺の責任が問題となる中、2002年に設立された。 常設裁判所として設立に至ったのは、法の支配による国際秩序を望む国際世論の高まりがあった。 国連安保理から付託された非締約国の問題も扱うため、管轄は広範囲になっている。 ただ、非加盟の米国や中国、ロシアなど大国の都合による横やりや不当な圧力が絶えない。 14年にはシリアのアサド政権(当時)による非人道的な問題をICCに付託する決議案が安保理に提起されたが、中国とロシアが拒否権を発動し否決された。 昨年3月、ロシアのプーチン大統領らに逮捕状を出すと、ロシアは報復措置として赤根氏らを指名手配し、今回、米国下院はICCに制裁法案を可決した。 イスラエル寄りが顕著なトランプ次期大統領が、圧力を強めることも懸念される。 ICCの機能停止を狙う制裁は人権と法の支配という普遍的な価値への挑戦であり、容認できない。 日本はICCへの最大資金拠出国で、初めて日本人所長を輩出した。 ネタニヤフ氏への対応では、英国やカナダなどがICCの判断を尊重する立場を示している。日本は、他の加盟国とも結束してICCを強く支援し、国際的な法秩序の擁護に役割を果たすべきだ。