俳優・大西信満、裏方時代に受けた“理不尽な仕打ち“。罵倒され…衝動的に「それなら表方になってやろう」
主演俳優なのに自ら劇場に飛び込み営業も
原田芳雄さんの事務所を辞めて荒戸源次郎さんの事務所に入った大西さんだったが、すぐに映画製作というわけにはいかなかったという。 「荒戸さんの事務所と言っても人もいないし、何もないんですよ。ただ、そこから毎日、朝の5時とか6時とかに『コーヒー飲もうか』って電話がかかってきて、5時ぐらいからやっている喫茶店が近くにあったので、毎朝コーヒーを一緒に飲んでいました。 荒戸さんは、いつも新聞を読んでいるんですよ。で、何か話があるだろうと思って座っているんですけど、ずっと新聞を読んでいて、何か一言二言、『今日は寒いね』とか言って、コーヒーを飲み終わると、『じゃあ、また』って帰っちゃうので、『これは何なんだろう?』って(笑)。 それで夜になると、今度は『ご飯を食べに行こうか』って電話がかかってきて。夜は夜で何かつまみながら酒を飲んで…というのが1年ぐらい続いたのかな。とくに何かの話をしたとかそういうことではなく、何気ない会話をしていくなかで、徐々に映画の準備も始まって。 そして映画製作の拠点として新たに物件を借りて、人も何人か入ってきて、徐々に映画らしく動いていって、ロケハンをしたり、資金集めのための企画書を書いたりとか。それで、どんどん人が入ってきてはどんどん辞めていって。 今の時代と違って荒々しい雰囲気があったので、合わない人はすぐ辞めていく。で、その同期の中で残っているのが大森立嗣監督だったり、プロデューサーの村岡伸一郎さんだったりするわけですよ。 で、映画作りが始まって、休みなしで毎日。1年のうち元日と、あともう1日ぐらいだけオフで、それ以外はずっと撮影後も含めれば3年ぐらい毎日顔を合わせていました。それで、どこかの段階で、『じゃあ、お前これ主役だ』って言われたので、そういうことになったんだって。 この本を読めとか、こういうことを練習しておけとか、いろいろ言われていくなかで、もしかしたらそういうことかなと思っていたし、その野心がなければ自分も続かなかったと思うんですけど」