尾上松緑、祖父2代目松緑ゆかりの「加賀鳶」梅吉と道玄で江戸の粋を巧みに表現
歌舞伎俳優の尾上松緑が3日、東京・歌舞伎座で初日を迎えた「十二月大歌舞伎」(26日千秋楽)の第2部「加賀鳶(かがとび)」に出演し、祖父の2代目松緑にゆかりのある梅吉と道玄を初役で勤めた。 河竹黙阿弥による江戸の粋が巧み織り込まれた世話物の傑作。本郷界隈では先日、加賀藩お抱えの鳶と旗本配下の定火消の間で喧嘩(けんか)が起きたばかり。日陰町の松蔵(中村勘九郎)をはじめ、加賀鳶たちが勢揃い。ずらっと花道に並び、黙阿弥らしい七五調のツラネの台詞は圧巻で、客席には一気に粋な江戸の風が流れ込む。血気に逸る加賀鳶の若い者たちを、頭分の梅吉(松緑)が江戸の町衆の憧れであった鳶頭の気風の良さを見せながら落ち着かせる。 日の暮れた御茶の水の土手際では按摩の道玄(松緑)が通りがかりの農民を手に掛け、懐からお金を盗んで立ち去りるが、落としていった煙草入れを松蔵が拾う。続く場面では、姪の奉公先へ道玄と内縁の妻お兼(中村雀右衛門)がゆすりに行く。道玄のふてぶてしさと、お兼の小悪党ぶり。道玄たちがお金を手に入れたところへ松蔵が現れ事態は一変。ここでも黙阿弥らしい七五調の名ぜりふでの道玄と松蔵のやり取りに注目が集まった。 松緑は梅吉について「鳶の中でも頭である梅吉には別格の格好良さがあります。すっきりとした格好良さを、ひたすら追求したい」と語り、道玄は「愛嬌(あいきょう)がありながら平気で人を殺してしまう、悪を悪とも思わない人物。小悪党ながら肝の据わった、ギラっとしたところを出せればと思います」と意気込んでいる。
報知新聞社