宮城県が進める「ムスリム土葬墓地計画」に不安の声...なぜ必要?イスラム系住民と考える弔いの多様性
■反対する側の不安の声
一方で、「ムスリム土葬墓地建設反対」の署名活動を行う、宮ノ森光輝氏。2023年5月、石巻市内に土葬可能な霊園を求める陳情を、漁業関係の友人から相談を受け反対署名を立ち上げたという。 反対意見について、「土葬となると、結果的に十数年とか100年規模で、その区間が使えなくなる。宮城県は田んぼもあるし、漁業が盛んな地域だ。それに対しての懸念はすごく聞かれる」と明かす。 大分県日出町の調査によると、キリスト教、イスラム教の土葬墓地、全国13カ所に問い合わせたところ、これまで水質汚染の問題は発生していないとのこと。また、墓地開設予定地に隣接する大分トラピスト修道院では30年以上前から土葬しているが、毎年の地下水の水質検査の結果から、水質汚染は確認されていないという。 宮ノ森氏は「結果的には福島の原発の問題もあったが、一番は風評被害だ。それがやっぱり大きいと思う」と話す。 水質汚染によって魚が汚染されているなどの風評被害が想定されるのか。「結果的にはそういうこともあると思う。たくさんの方が埋葬されれば、その後どうなるのか…というのはある」と答えた。
■弔いの多様性どう実現させていく?
「日本のムスリム人口 2024年」によると、日本で暮らすムスリムは2010年の11万人から、2023年には35万人に増え続けている。その中で日本人ムスリムは、5万4000人(2023年末)。 どうすれば、土葬について許容できるのか。宮ノ森氏は「そもそも、当事者同士の話は全然されず、知事から土葬をやるという話が出てきた。亡くなった場合、例えばこういう場所に毎年来る。それに対して費用を出す。技能実習で来ているお子さんのお父さん、そういった人たちに説明していないのは、どうなのかなという気持ちはある」と県が計画を進めるプロセスに疑問を呈した。 コラムニストの小原ブラス氏は、土葬について「死ぬ時にどうお墓に入れてもらうか、日本に来る段階で考えることはない。数年したら、自分の国に戻ろうとしていたが、日本で子どもができて、生活基盤ができて、なりゆきでそうなってしまったパターンもある。そこで、汚染の問題があるのか・ないのかは話し合いの余地があるかもしれない。仮にあったとしても、嫌なら帰ってくださいで議論を止めるのはいかがなものかなと。日本に住んで、住民票も置いて、税金も払って生活している人たちだ。そういう人たちのことを日本国民と言わない人もいるかもしれないが、僕は国を構成する大事な国民のパーツだと思う。そういう人たちの基本的な人権を守ろうとするのは、どこの国でもやるべきことだ。弔う権利も人権のうちの一つなんじゃないか」との見方を示した。 (『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部