壊れゆくシャンデリア! バンクス・ヴィオレットが放つ〈セリーヌ〉の衝撃アートプロジェクト。
エディ・スリマンが選んだのはアーティストのバンクス・ヴィオレット。
2023年クリスマスシーズンから2024年初旬にかけて、表参道店と銀座店を含む世界各地の〈セリーヌ〉旗艦店を彩るショーウィンドウに現れたのは、壊れゆくミニマルなシャンデリア。〈セリーヌ〉とバンクス・ヴィオレットによる全世界で展開中のアートプロジェクトが意味するものとは? 【フォトギャラリーを見る】 ウィンドウアートプロジェクトにおけるコラボレーションの相手として、〈セリーヌ〉のクリエイティブ・ディレクター、エディ・スリマンが選んだのはアメリカ人アーティストのバンクス・ヴィオレット。2人は2005年にニューヨークで出会い、2007年にはベルリンのアートギャラリー〈Arndt & Partner〉でエディがキュレーションしたグループ展「Sweet Bird of Youth」にヴィオレットも参加している。絵画・彫刻・インスタレーションの分野でニューヨークのアートシーンを引っ張ってきた人物だ。2022年秋冬のメンズコレクション《BOY DOLL》ではヴィオレットによる馬のグラフィックがレザージャケットの背中を飾った。 エディは今回、クリスマスシーズンに向けて、〈セリーヌ〉の世界の旗艦店のためのウィンドウディスプレイをヴィオレットに依頼。ヴィオレットはインダストリアルな直管LEDライトを使ったシャンデリア14作品を制作し、世界のフラッグシップストアで1点ずつ展示されている。一部のライト管が床に接地していたり、斜めに傾いたり、横倒しになったり。黒いコードも剥き出しのまま見えている。一つ一つ異なる形状のシャンデリアはすべて“崩壊状態”であることが特徴だ。 「このシリーズの最初の作品は安定して吊り下げられた形でしたが、その後、同じ形のシャンデリアが垂直方向、あるいは水平方向に崩れ落ちていくさまをストップモーションのように捉えたものです。安定した状態から壊れた状態へ、華やかさから崩壊へと変化するシャンデリアは、床に転んでつまずき、隅でうなだれている人間の身体のように見えるかもしれません。それはマーティン・キッペンバーガーの作品《Street Lamp for Drunks》の再解釈でもあります」(バンクス・ヴィオレット以下同) 《Street Lamp for Drunks》とはドイツ人アーティストのマーティン・キッペンバーガーが1988年にヴェネチア・ビエンナーレで発表した作品で、千鳥足の酔っ払いのようにくねくねとポールが曲がっている街灯を模した彫刻なのだが、ヴィオレットはそこに、アヘンを制限され麻薬に依存した現代の様相を重ね合わせたという。 「私のこれまでの作品に通底するのは崩壊や劇場性、フィクション、そして暴力的な活動への周到なアプローチです。そのことは今回のセリーヌのプロジェクトにもシームレスに拡張されたのではないかと思っています」