「経口での妊娠中絶薬」の正しい使い方、安全性、費用などを医師が解説
経口中絶薬の安全性は?
編集部:承認されたばかりの薬ということで、安全性も気になります。 矢谷先生:日本で経口中絶薬が承認される前に、中絶を希望する女性120人に対し行われた臨床研究では、58%にあたる69人に下腹部痛やおう吐などの症状が出ましたが、いずれも軽度~中等度だったそうです。 中絶が完了したあとに子宮内出血や子宮内膜炎・出血性貧血などの重い症状を訴えたのは4人(約3.3%)でした。 編集部:なるほど、そのような研究があったのですね。 矢谷先生:はい。例えば当院でも、180例に対し妊娠中絶薬を処方しましたが(2024年4月末現在)、感染症や、重度の子宮出血などはなく、強い吐き気(悪阻)で救急外来を受診し、嘔吐剤の注射を受けて帰宅した方が2名おりました。 外科的手術に移行した方は2名いて、1例は妊娠悪阻で1剤目服用後10分以内に薬をもどした方、もう1例は妊娠9週目前の方で、夕方近くになったため、手術を希望した方です。 まだ新しい中絶法のため不安があるかもしれませんが、欧米、カナダ、オーストラリアでは70%の方が中絶薬を選択しています。 編集部:費用についても教えてください。 矢谷先生:例として、当院の場合は中絶薬5万5000円+処置5万円(税込)となります。内服前の検査や処置の費用や、外科的手術に移行した場合の手術料は無料です。 編集部:経口薬での妊娠中絶について、注意点などはありますか? 矢谷先生:薬が処方できるのは「母体保護法指定医であること」そして「有床診療所であること」と定められています。必ず、これらに当てはまる医療機関であることを確認して受診してください。 編集部:最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。 矢谷先生:経口中絶薬が承認され、中絶の選択肢が増えたことには少しホッとしていますが、産婦人科医として日本が海外から30年も遅れてしまったことは無念さも感じます。 海外では妊娠12週前まで使用可能だったり、公費での補助があったりなど、使用についての環境も整っています。将来的に日本もそうなっていくことを望みます。