強圧的統制→暴力→ストーキング→殺人…国が「連鎖」を断ち切るには=韓国
再犯の多いデートDV、単なる暴行とは異なる 被害者の意思に関係なく処罰が必要
「仁川(インチョン)ストーカー殺人事件」は、相手の日常に干渉する統制に続き、暴力とストーカー行為を繰り返し、最後は命まで奪うという、交際暴力(デートDV)から殺害へと進む事件の主な特徴がそろっている。繰り返されるこのような事件を防ぐためには、親密な関係にある加害者の「強圧的統制→暴力→ストーキング→殺人」という連鎖を国が断ち切らなければならない。 最も急がれるのは、デートDVの被害者の表面的な意思とは関係なしに犯罪を処罰するとともに、保護策を講じることだ。デートDVの被害者は、自分の日常をよく知る加害者の報復を恐れ、処罰の意思をなかなか明らかにできない。しかし、家庭内暴力処罰法(家庭内暴力犯罪の処罰などに関する特例法)上の家庭内暴力(DV)に該当しない、あるいはストーカー行為処罰法(ストーカー犯罪の処罰などに関する法律)上のストーカー被害であるとの立証が難しいデートDVに対応するための法や制度は、整備されていない。 第22代国会で11日までに提出されたデートDV関連法案は3件で、それぞれソ・ビョンフン(共に民主党)、チョン・チュンセン(祖国革新党)、キム・ミエ(国民の力)の各議員が代表発議したもの。いずれも被害者の意思とは関係なしにデートDVを処罰するものになっている。ソ・ビョンフン、チョン・チュンセンの各議員の案は、家庭内暴力処罰法を改正して適用対象を「親密な関係」へと広げ、そのような関係における暴行や脅迫などは被害者の明示的意思に反していても公訴できるようにしている。キム・ミエ議員の案は特例法を制定するもので、刑法の反意思不罰条項の適用からのデートDV犯罪の排除を明示している。3つの法案はいずれも、デートDVの被害者も家庭内暴力処罰法上の保護措置の対象としている。 配偶者や交際相手の日常に干渉して自由を奪い、他人と交流できないようにするなどの「強圧的統制」を規制する必要性も提起される。親密な関係における暴力被害の多くは、このような統制が伴うからだ。国会立法調査処のホ・ミンスク立法調査官は、7月10日にソ・ビョンフン議員室が主催した討論会で、「相手を所有物、統制と操縦の対象と考えるという加害者の特徴は、被害者の殺害(自殺含む)が予想される非常にはっきりとしたリスク要因」、「英国やオーストラリアのニューサウスウェールズ州などでは、強圧的統制を禁止する法を施行している」と語った。 3つの法案のうちソ・ビョンフン、チョン・チュンセンの各議員のものは、家庭内暴力および親密な関係における犯罪の類型に強圧的統制を含めている。その具体的な定義は、チョン・チュンセン議員案では、正当な理由なく2回以上相手を監視し孤立させるか、日常の統制を試みるなどによって不安または恐怖心を抱かせる行為。ソ・ビョンフン議員案では、脅しを伴って強圧的に相手を統制することで身体、経済、社会的な独立と表現、移動、意思決定の自由を侵害し、相手の日常生活の維持に相当な支障をきたすと認められる行為だ。 強圧的統制は、家庭・交際関係での暴力の被害者が直面する危険を感知するための主な指標であるにもかかわらず、警察が被害者保護のために用いる調査の質問項目にはほとんど反映されていない。ハンギョレが共に民主党のクォン・ヒャンヨプ議員室を通じて、家庭内暴力緊急臨時措置判断調査票とストーキング緊急応急措置判断調査票を入手して調べたところ、家庭内暴力調査票には「加害者によって人に会えないようにされたり、一挙手一投足を報告させられたりするか」という質問が一つあり、ストーキング調査票には一つもなかった。 チェ・ユナ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )