トヨタ社長「単独では生きていけない」 脱クルマ会社への未来戦略
アップデートではなくゼロからの街づくり
さて、ではさらに街がまるまるIoT化されていたらどうだろう? 特に前述のMaaSによるさまざまなサービスが付帯するようになったら、大幅に負荷を軽減できる可能性がある。帰宅時間に合わせてクリーニングや宅配が届く。このあたりは簡単だろう。あるいは少し運営上の安全性が高められれば、デイサービスを利用する介護の必要な高齢者や、幼稚園・保育園の送迎負荷がなくなるかもしれない。 もちろんこれらを実現するためは、まだまだ仕組みや技術の進歩、法律の改正が必要だが、今の時代に暮らす我々が切実に欲するサービスになり得ると思う。 しかしながら、そのためにはデリバリー用の駐車場や十分なセキュリティを備えた個宅納品窓口など、e-Paletteがサービスを行いやすい道路環境や住宅環境も必要になるだろう。 つまりコネクティッドシティ構想は、街一つを最初からこうしたプランに基づいて企画し、人々の暮らしそのものをより快適に変えて行こうという計画だ。基本的には既存の街をアップデートしていくより、ゼロからの街づくりに適していると思う。 例えば、全国に張り巡らされた高速道路網に上手くぶら下げて街を作る方法が考えられる。サービスエリアやパーキングエリアに設けられるスマートインターチェンジに直結した街づくりであれば、物流の効率は圧倒的に上がる。街に共用の物流倉庫、もしくはモール型店舗を用意すればよい。学校や病院などもいくつかのコネクティッドシティで共有して運営することが可能だろう。 それらの実現のためには、全体を束ねるルールを策定し、あらゆるサービスやシステムがユニバーサルに接続できる標準スキームを用意しなくてはならない。
ここまで読んだ賢明な読者にはすでにお分かりの通り、生活を便利にしようとすればするほど、多くの法人が提供するさまざまな商品やサービスをシームレスに繋ぎ合わせなくてはならなくなる。パナソニック1社では無理だし、それにトヨタが加わっても同じことだ。 もちろん国や自治体の協力も重要だし、法整備も進めなくてはならない。しかし、同じ目標を持てる仲間づくりは更に重要だ。街は大小取り混ぜたビジネスの集合体である。試みにあるショッピングモールのテナントを検索してみたら約200テナントが入っている。前述した病院や学校や幼稚園・保育園だけでなく、美容院もクリーニング店も結婚式場も葬儀場も、動物病院も宝くじ売り場も写真館も整体もカルチャースクールも楽器店も必要だ。