創業以来初「年間売上高1000億円」を突破…餃子の王将が「約2年で4回の値上げ」をしても顧客の心を離さない理由
餃子の王将を展開する王将フードサービスは、2024年3月期に創業以来初となる年間売上高1000億円を突破した。強みはどこにあるのか。高千穂大学商学部教授の永井竜之介さんは「メーカーの商品開発の文脈で使われることが多い“スモールマス戦略”という理論がある。この視点から分析すると見えることがある」という――。 【この記事の画像を見る】 ■2022年から4度の値上げを行っても好調を維持 中華料理チェーン「餃子の王将」を展開する王将フードサービスは、創業から56年を経た2024年3月期に初めて年間売上高1000億円を突破した。10年後の2034年には、現在の売上高の倍となる2000億円を目標に掲げており、今後さらに成長を加速していこうとしている。 餃子の王将では、原材料費や物流費、人件費などの高騰を受けて、2022年から24年にかけて4度の値上げを行ったが、それでも客足が遠のくことはなく、好調を維持している。なぜ餃子の王将は、ユーザーから支持され続けることに成功しているのか。ここでは、日本全国に729店舗(2024年3月31日時点)を展開する全国チェーンでありながら、それぞれの店が「地元の味」として親しまれる餃子の王将の強みについて、「スモールマス戦略」の視点から分析していこう。 ■「真の手作りの味」を実現する仕組みがある 餃子の王将のメニューは、「マス(幅広いユーザー)」のニーズを満たしてくれる「ちょうどいい味」である。看板商品の餃子は、すべての原料を国産にこだわり、毎日、自社工場で作り、冷凍せずに店舗へ配送・調理されることで、特別な美味しさを提供している。また、一般的なチェーン店ではセントラルキッチンで加工されたものを店で温めて提供することは珍しくないが、餃子の王将は店舗のスタッフがオープンキッチンで、お客の目の前で調理する方針を採用しており、真の手作りの味を実現している。 こうしたこだわりの美味しさがあったうえで、餃子の王将は、子どもから大人まで、誰でも楽しめる味になっている。「家庭の味」よりもしっかり中華で、「中華を食べたい」ニーズを満たしてくれる。そして、香辛料やクセが強い本場の味の「ガチ中華」ほど食べる人を選ばない。誰でも食べやすい、ちょうどいい味だからこそ、幅広いユーザーから利用されている。「マス」をターゲットにできる点は、餃子の王将の多店舗展開を支える大きな強みになっている。