【シンガポール】新たな不動産抑制策を導入 中古価格上昇で、支援策も拡充
シンガポール政府は、新たな不動産投機抑制策として公営住宅(HDBフラット)のローンの融資比率(LTV=融資時点の物件価格に対するローン貸出額の比率)の上限を引き下げる。中古住宅市場が過熱気味で、価格が上昇していることが背景にある。初めて住宅を購入する世帯向けに助成金を増額するなどの支援策も導入する。 国家開発省、住宅開発庁(HDB)は19日に発表した共同声明で、公営住宅の住宅ローン融資比率の引き下げと、初めて住宅を購入する低中所得層の世帯への財政支援拡充の2施策を導入すると発表した。 住宅開発庁が公営住宅の購入者に融資する制度では、融資比率の上限を80%から75%に5ポイント引き下げ、金融機関が提供する住宅ローンの融資比率と同水準にした。今月20日以降に住宅開発庁が受理した売り手・買い手双方の中古住宅販売申請と、10月以降に同庁が受け取る受注建築(BTO)方式の公営住宅の購入申請に適用する。 初めて住宅を購入する低中所得層の世帯向けには助成金を増額し、住宅ローンの融資比率引き下げの影響を緩和する。具体的には「拡張版中央積立基金(CPF)住宅助成金」制度の下、助成金の上限額を現在の最大8万Sドル(約897万円)から同12万Sドルに引き上げる。独身者向けの上限額は現在の最大4万Sドルから同6万Sドルに増やす。 シンガポールでは新型コロナウイルス禍の影響による建設工事の遅延などで住宅価格が上昇している。政府によると、公営住宅の中古価格指数の上昇率は今年4~6月期に前四半期から2.1%上昇し、1~3月期の伸び率を上回った。2024年は最低占有期間(MOP、同期間終了後に物件を売却できる)を過ぎた物件が少なく、中古物件の供給量が減ったことなどが背景にある。 政府は21年12月、不動産投機抑制策として印紙税率の引き上げ、総債務返済比率の引き下げ、住宅開発庁による住宅ローン融資比率の引き下げを実施。22年9月には公営住宅のローン融資比率の上限を85%から80%に引き下げていた。今回は価格上昇率を抑制するためにさらなる施策を打った。 政府は声明で、「公営住宅の需要は引き続き高い。今回の抑制策導入で購入者に対して慎重な借り入れを促すとともに、低中所得者がより手ごろな価格で住宅を購入できるようにする」と説明した。