元朝日新聞記者・植村隆氏が記者会見(全文1)言論の戦いに勝ち、判決で負けた
元朝日新聞記者の植村隆氏は15日、東京都千代田区の外国特派員協会で記者会見を行った。 【動画】元朝日新聞記者の植村隆氏が記者会見 慰安婦記事めぐり訴訟(2018年11月15日) ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードはYouTubeのTHE PAGEチャンネル上の「元朝日新聞記者の植村隆氏が記者会見 慰安婦記事めぐり訴訟(2018年11月15日)」に対応しております。
札幌地裁判決に対する植村隆氏の見解
植村:どうも、私は元朝日新聞記者で、現在は韓国カトリック大学の客員教授をやっております、植村隆と申します。今日は皆さんどうもお集まりいただきまして、ありがとうございます。今日は外国特派員協会では二度目の記者会見です。日本メディアが植村バッシングを無視していた2015年に、いち早く反論の場所を与えてくれ、最初の記者会見に呼んでくださったことを、今でも私は忘れておりません。 今回の判決は不当な判決です。私は控訴して、高等裁判所で逆転を目指します。この事件は私が1991年に書いた朝鮮人元慰安婦のカミングアウトの記事について、櫻井よしこ氏がねつ造とレッテル張りしたコラムを書いた結果、植村への激しいバッシングが起きました。そして、内定していた大学教授の就職の道を絶たれ、さらに非常勤講師として勤務していた別の大学への攻撃や、娘を殺害するなどの脅迫状が送られるようになった、そのような騒ぎになったものです。 私は2015年の2月に札幌地方裁判所に、櫻井氏と櫻井氏の記事の掲載した雑誌の出版社3社を名誉毀損で訴えました。この裁判の判決が9日にあり、裁判所は私の訴えを退け、櫻井氏に責任はないとしました。判決は櫻井氏が私の社会的な評価を低下させたと認定しました。また、私の記事がねつ造であるという認定はしておりません。 ところが判決は、櫻井氏について、私がねつ造したと信じても仕方がないという判断で、櫻井氏の責任を免除しているのです。私の記事をねつ造と書くに当たって櫻井氏は、私への取材も、当時の私の勤務先である朝日新聞への取材もしていません。また、朝鮮人元従軍慰安婦の聞き取り調査をしていた韓国側団体への取材もしていないのです。判決が櫻井氏を勝たせるため、直接証拠としたのは、たった3つの資料でした。当時の韓国紙、ハンギョレ新聞、当時の雑誌、月刊『宝石』、そしてこの元慰安婦が東京地裁に自分の裁判のために作成した訴状、この3つでありました。このたった3つの資料を基に櫻井氏は、この元慰安婦は人身売買だから強制連行でないというふうに断定し、植村はそれを知っていたのに書かなかったと主張し、そして、だから植村はねつ造だというふうに批判したのです。 しかしハンギョレ新聞にも雑誌にも、人身売買という記述はありません。むしろその2つですね、ハンギョレ新聞と月刊『宝石』にはですね、むしろ日本軍による強制連行と読める内容がありましたが、櫻井氏はその部分を無視していました。また元慰安婦の訴状については、自身の説の都合のいいように改ざんして引用していました。このため、改ざんした点を私から指摘された櫻井氏は、訂正に追い込まれています。訂正に、追い込まれているのです。 櫻井氏は元慰安婦について、人身売買である、交渉であり、日本軍による強制連行はないから、日本政府には責任がないかのような主張をしております。そして私が書いた記事をねつ造と決めつけ、日本国と日本人の名誉を、名誉が著しく傷つけられたと非難しています。このようなずさんな取材で、事実に基づかない文章を書いた櫻井氏の責任を免除することは、非常に危険だと思います。この判決はフェイクニュースの蔓延を助長しかねません。 私は言論人、ジャーナリストとして、言論の自由が最も大切だということを認識しています。しかしそれは事実に基づく、事実に基づいた取材を土台にしたものであることが当然だと思います。うそやいんちきを基にして一方的に他人を攻撃する言論の自由があるべきではないと思っています。このような判決によって、根拠薄弱な言論が横行することが、日本社会にとってはとても危険なことだと思います。また、このような判決が確定すれば、慰安婦問題についての日本国内での正しい理解を妨げることになり、真の解決をさらに難しくすることになるのではないかと危惧しています。 櫻井氏は人身売買だから日本に責任はないかのように主張していますが、これは明らかに間違いです。仮に人身売買で慰安婦にされたとしても、戦時における性暴力の被害者であることに違いはなく、大きな人権侵害なのです。櫻井氏のような言説が日本に広まれば、日本はますます国際社会から孤立し、慰安婦問題の解決が遠ざかることになると思います。ありがとうございました。 司会:(英語)。