プレッシャーがかかる場面で、本来の力を発揮する方法とは?【里崎智也×五十嵐亮太のライフハックベースボール!】第34回
■「勝ちたい気持ちが強いほどうまくいかない」 五十嵐 何を学んだんですか? 里崎 「勝ちたい気持ちが強ければ強いほどうまくいかない」ということ。結局、この試合に勝って北京五輪出場を決めるんだけど、試合に勝ったことよりも、このことに気づいたことのほうが、後のことを考えるとすごく大きかった気がするな。 五十嵐 ただ、まったく逆の意見で「最後の最後に勝敗を決めるのは勝ちたい気持ちが強いほうだ」という考え方もあるじゃないですか? "火事場のバカ力"じゃないけど、その思いによって、普段の自分以上の実力を発揮できることもありますよね。僕自身も、「ここは絶対に抑えたい」という場面で、とことん気持ちを奮い立たせて抑えた経験は何度もありますから。 里崎 でもね、「勝ちたい」という気持ちが強すぎると、「負けられない」という思いも芽生えてくるでしょ。すると、「負けたらどうしよう?」という不安も生まれてくる。そうなると負のスパイラルに陥ってしまって、本来の自分の力を発揮することが難しくなってしまう。それが、プレッシャーの正体だと思うんだよね。 五十嵐 緊張しすぎてしまうと確かに体が硬くなっちゃいますね。勝負に対して真剣であればあるほど、「勝ちたい気持ち」が強くなるのも当然のことだし......。サトさんはどうマインドチェンジしてましたか? 里崎 現役時代の僕は、「勝ちたい気持ち」から「自分を信じる気持ち」に変えるように意識していたね。いくつか段階があって、「勝ちたい、勝ちたい」と意識している自分に気づいたときに、まずは「自分を笑い飛ばすこと」を意識したな。 五十嵐 自分を笑い飛ばす? 里崎 「オレって、若いなぁ。この年になってもまだ"勝ちたい"って欲張っちゃうの?」って、自分のことをイジる。同時に「別に負けたってええやん。命まで取られるわけじゃないんだし」と、なるべく物事を気楽に考えるようにシフトしていく。すると、少しずつ気持ちが落ち着いてくるんだよね。 五十嵐 目の前の勝負に集中しているときは、どうしても周りが見えなくなったり、視野が狭くなったりしますからね。周りが見えないほど集中するのがいいときもあるけど、サトさんの場合は、あえて自分のことを客観視する。冷静に"もうひとりの自分"が、自分にツッコミを入れることで普段の自分に近づけようということなんですね。でも、なかなかその境地に達するのは難しいと思いますけど......。