「アウトになったらベンチのせい」健大高崎の機動破壊 センバツ
◇センバツ高校野球2回戦(26日、甲子園) ◇○健大高崎(群馬)4―0明豊(大分)● 【写真で振り返る】健大高崎、「ゴロゴー」で得点 「大事なのは迷わず飛び込む勇気。アウトになったら指示を出したベンチのせいなので」 一回1死二、三塁。健大高崎の三塁走者・斎藤銀乃助は腹をくくって大きくリードを取り、打席に立つ4番・箱山遥人の動きだけに集中していた。 ベンチからの指示は、内野ゴロでもホームに突入する「ゴロゴー」だった。「箱山がスイングし始めたら、(走塁の)スタートを切る」。4球目、箱山の打球は当たり損ねの投ゴロ。斎藤は捕手のタッチをかわすように滑り込み、左手で本塁ベースに触れて貴重な先取点をもぎ取った。 健大高崎の昨秋の公式戦のチーム打率は3割9分7厘で出場校中トップを誇る。選手たちも「打撃が売りのチーム」と自負してきた。 打球が飛ばない新基準の金属バットへ移行することを踏まえて、今冬はウエートトレーニングに力を入れた。斎藤は「持ち上げるベンチプレスの重さと体重の学年平均は(現チームの最上級生が)どちらも野球部歴代トップ」と語る。それでも、今春の練習試合では低反発バットの影響からか、想像以上に内野ゴロが増えた。 だが、健大高崎は低反発バット対策としてもう一つ、走塁で相手を打ち破る伝統の「機動破壊」を磨くことも忘れなかった。斎藤は「体を大きくすることの他に、(低反発バットの)対策が必要だった。昨年秋の課題だった走塁に力を入れることにした」。 打球判断や走り出すタイミング、状況に応じたスライディングの練習を徹底した。さらに、リードの幅を広げて、より投手に重圧がかかるようにもしてきた。青柳博文監督は「(ゴロゴーは)打った瞬間にゴー。ライナーのリスクはあるが、アウトならしょうがない。ばくちです」と言いつつも、「(スクイズより)ゴロゴーの方が打者も走者も楽」。豊富な走塁練習に裏打ちされた作戦だった。 六回も野選で追加点を奪い、明豊の先発・一ノ瀬翔舞に「あそこまでレベルの高い走塁は大分や、九州などでは見られない」と嘆かせた。 終わってみれば7安打で適時打はなかったものの、4点を奪った。打撃が自慢のチームだが、それだけでは終わらない攻撃の多彩さがある。【磯貝映奈】