日本で急増中の「梅毒」とは?症状や予防策を専門医が解説
性感染症のなかでも現在日本で猛威をふるっているという「梅毒」。今回は、 国内の現状から病気の症状、感染経路や予防策までを、プライベートケアクリニック東京 新宿院の院長で性感染症の専門医、尾上泰彦先生に解説していただいた。新しいパートナーや出会ったばかりの人と性交渉をする前に、確認しよう。 お話を伺ったのは:尾上泰彦先生 泌尿器科医・医学博士。1944年生まれ。日本大学医学部卒業後、同医学部専任講師を経て宮本町中央診療所を開設。2017年5月からはプライベートケアクリニック東京 新宿院 院長として長年積み重ねてきた性感染症の専門医として診療にあたる。
国内の梅毒の現状
「複数ある性感染症(STD)のなかでも、近年急増しているのが梅毒です。国立感染症研究所が公表したデータによると、2023年の全国の累積報告数が1万3251人に達し、1960年以降で最多となりました」 「患者数が全国で最も多い東京都では、2012年からの10年間で約12倍に増えています。女性は10代と20代、男性は30代以上に罹患者が多い傾向です」
梅毒の症状
「梅毒にかかると、男性の場合は陰茎や亀頭にしこりやブツブツ、できもの、体や手のひらに赤いブツブツやあざのようなもの、口の中にできものや口内炎のような症状が現れます。しかし、罹患者の70%以上に症状がないことも特徴のひとつです」 「さらに、梅毒の母体から胎児への感染リスクが60~80%と非常に高く、“先天梅毒”を引き起こすだけでなく、最悪の場合、流産や死産となる可能性もあります。感染後、約1週間から13週間の潜伏期間を経て発症するので、気になる症状があれば不安行為があってから6週間以内を目安に、病院にかかりましょう」
感染経路
「主に性行為を含む類似行為を通して、皮膚や粘膜の小さな傷から細菌が侵入し、感染します。なお、空気感染や飛沫感染はありません」
進行すると現れる症状
「性器や肛門、口など、感染した箇所にできるしこりや潰瘍などの病変は放置しても3~12週間で消失します。これによって治ったと勘違いしてしまう人も多いですが、梅毒にはいくつかのステージがあり、治療なしに自然治癒することはありません。梅毒患者数が日本の100倍を超えるといわれる中国では、死亡事例も報告されています」 放置してしまうとどうなるのか。東京都保険医療局による梅毒のステージごとの症状がこちら。 ・第1期 感染後約3週間で感染した場所に、できもの、しこり、ただれなどができる。 ・第2期 一度症状が消えた後、1~3カ月が経つと全身にブツブツができる。しかし、これもまた数週間~数カ月で消失。 ・潜伏梅毒 その後は症状がないまま何年も経過することがあるが、皮膚や内臓で病気は静かに進行する。 ・後期梅毒 数年~数10年後に、鼻の欠損や心臓、血管、神経の異常が現れることもある。