高橋愛、モーニング娘。の変革期 リーダー時代は「あがいていた」
逆風の中、プロデューサーのつんく♂から言葉がかかる。「『こんな時だからこそレベルを上げなければいけない』と、つんく♂さんから言われてダンスレッスンを強化したり。メンバーも同世代が多かったこともあって、皆で肩を並べて『頑張ろうぜ!』って横並びに歩きながら、全員で背中を押していたような感覚。まるで部活のようだった」と、骨太なメンバーに支えられながら歩いてきた。高橋自身も「リーダーを務めていた4年半は時間にすると長いかもしれないけれど、私としてはあっという間。逃げ出したいことはあっても、辞めたいとは一度も思わなかった」と、数々の苦難にもまっすぐに向かい合った。 現在のモーニング娘。は、フォーメーションダンスを取り入れるなど新たな活路を見出し、存在感を示している。その背景には、高橋ら変革期を支えたメンバーの踏ん張りがある。「モーニング娘。のオリジナルメンバーが作ってくれたベースを壊すことなく活動しながら、(現メンバーは)今の彼女たちしか出せないものを提示していて、凄くカッコいい。今までの数多くの名曲も大切だけれど、つんく♂さんが今の子たちを思って作った歌を沢山歌って、私たちがいた時代の曲に囚われることなく、今の自分たちの魅力を出し切ってほしい」と、現メンバーたちの活躍に目を細める。 2011年9月、25歳になった高橋は10年間在籍したモーニング娘。を卒業。その10年間で得たものは何ものにも代え難い。「とにかく学んだことしかなくて、度胸もついた。コンサートの経験があったからこそ、生ものが好きになって、ミュージカルの方面に行きたいと思えるようにもなった。モーニング娘。がなければ、自分の将来も見えていなかったはず」と振り返る。グループを抜けてこそわかった厳しさも経験。「シングルを出すことの難しさや、ミュージカルに出演するのには、オファーやオーディションでの合格がなければいけない、という普通の事を知った。これまでが、あまりにも恵まれ過ぎていたと思った。自分が頑張らなければ仕事は来ない、ということを意識して『イチから』と思わなければダメ。自分なんて芸歴の長い“新人女優”ですから。『これでいい』なんて思ったら終わり」と、気持ちの上では“新人”を自負する。 苦悩のリーダー時代を経て、“第2の人生”を踏み出している高橋。今後、どのような“リーダーシップ”を発揮できるのか、高橋自身も自らの可能性に期待しているようだ。 (取材・文/石井隼人) ■高橋愛(たかはし・あい) 1986年9月14日生まれ、福井県出身。2001年にモーニング娘。に加入し、2007年から4年半、リーダーを務める。2011年に卒業後は、ミュージカルへの活動のフィールドを移す。日本人のソウルフード・唐揚げがつなぐ故郷と家族の物語を描いた9月20日公開の映画『カラアゲ☆USA』で、映画初主演を飾っている。