ハッブル宇宙望遠鏡が約97光年先の太陽系外惑星で水蒸気を検出 海洋惑星の可能性も
モントリオール大学のPierre-Alexis Royさんを筆頭とする研究チームは、「うお座(魚座)」の方向約97光年先で見つかった太陽系外惑星「GJ 9827 d」の大気中に存在する水蒸気を検出したとする研究成果を発表しました。 今日の宇宙画像 研究チームによると、GJ 9827 dは地球と比べて直径は約1.96倍、質量は約3.4倍で、主星である恒星「GJ 9827」を約6.2日周期で公転しています。公転軌道が主星の近くにあるため、表面温度は金星に近い約425℃と推定されています。主星のGJ 9827は太陽と比べて直径と質量がどちらも約0.6倍、表面温度は約4030℃のK型星で、GJ 9827 dの他にも2つの系外惑星「GJ 9827 b」「GJ 9827 c」が見つかっています。 GJ 9827 dの大気組成を調べるために、研究チームは「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope:HST)」の「広視野カメラ3(WFC3)」を使用して、地球から見てGJ 9827 dが手前を横切る「トランジット」が起きた時のGJ 9827を観測しました(2017年12月から2020年12月にかけて11回)。GJ 9827 dに大気が存在する場合、トランジットが起きている時のGJ 9827の光にはGJ 9827 dの大気を通過した光も含まれているため、分光観測(※)を行うことでGJ 9827 dの大気組成を調べることができます。 ※…電磁波の波長ごとの強さを示すスペクトルを得る観測方法のこと。スペクトルには原子や分子が特定の波長の電磁波を吸収したことで生じる暗い線「吸収線」や、反対に特定の波長の電磁波を放つことで生じる明るい線「輝線」が現れる。吸収線と輝線は合わせて「スペクトル線」と呼ばれる。分光観測を行うことで天体の化学組成を調べたり、スペクトル線のずれ具合をもとに視線方向の運動速度を割り出したりすることができる。