愛媛×大分「交流給食」軌道に 互いの名物メニューに登場
豊後(大分)の佐賀関半島と伊予(愛媛)の佐田岬半島は、幅14キロの豊予海峡を挟み、手を差し伸べ合っているように見える。「えひめ大分交流給食」は2020年春、この地域を一つの経済圏として発展させようという気運の中で始まった。 5月下旬、日本最大の温泉郷・大分県別府市の給食に、宇和茶の産地・愛媛県西予市の人気メニュー「ちくわのお茶揚げ」が登場した。豊後水道の幸で作られたちくわに、栄養豊かな茶葉を振りかけて揚げた郷土食だ。 南立石小学校、6年生の教室。薬師寺陸翔君(11)が一口食べた後、「お茶の香りが広がる。ご飯も進む」と感動。緑茶は飲むものと思っていた藤原愛海さん(11)も「お母さんにリクエストしよう」。鴨崎心美さん(11)は交流給食をきっかけに「日本全国の給食を食べてみたい」と思うようになった。 交流給食に参加するのは、別府市の他、大分市、佐伯市、臼杵市など大分側6市と、西予市の他、八幡浜市、大洲市、愛南町など愛媛側7市町。それぞれが用意した交流用のメニュー数品から選び、学期に2、3度のペースで出している。 鶏料理が盛んな大分は「とりめし」「トリニータ丼」「とり天」など鶏肉が主役のメニューが多く、別府市の交流メニューにも赤パプリカパウダーとトウバンジャンを絡めた唐揚げ「別府地獄揚げ」がある。佐伯市も「ジビエ(野生鳥獣の肉)カレー」、津久見市は「オーロラマグロ」など特産品を押し出す。 愛媛側もかんきつ生産が盛んな八幡浜市は唐揚げの「マーマレード煮」、栗をブランドにする内子町は「栗寿司(ずし)」、松野町の「ゆずちらしずし」など地域が誇るメニューが並ぶ。ちなみに西予市は昨年6月、別府市の「とり天」を作り、大好評だった。 市内の畑で栽培された野菜をふんだんに使い、ご飯も全て市内産で賄う別府市は、中学生が考えた給食用マスコット「こめっぷ」を食器や給食センターのトラックなどに描き、地産地消と域内交流を楽しく盛り上げる。
日本農業新聞