月9「海のはじまり」の脚本家・生方美久の次回作は学園ドラマ!?
令和の清少納言を目指すべく、独り言のようなエッセイを脚本家・生方美久さんがお届け。生方さんが紡ぐ文章のあたたかさに酔いしれて。【脚本家・生方美久のぽかぽかひとりごと】
アンディやリリイが刺さった若者時代
TikTokで昔の曲に合わせて若者たちが踊っている。‟若者”という言葉を使うのは難しい。わたしみたいな30代はちょうど難しい。さすがにTikTokで踊らないし、平成文化にワクワクするけど、上の世代の人からしたら、我々が「最近の若者は」なんて語るのは鼻に付くようだ。そりゃそうだ。小学生のとき、中学生はとても大人で怖く見えたし、二十歳になったとき、十代の後輩に聞こえるように「二十歳超えると身体にガタが~」とわざと話したものだ。結局は、どんな環境で、どんな人から見たら、という基準があっての‟若者”なのだ。31歳のわたしは、脚本家という職業のなかでは若手だが、テレビドラマよりTikTokを観る現役高校生からしたら立派なババアだ。 31歳をババアだと思っていた高校生のわたしは、音楽がだいすきだった。ドラマや映画ももちろんすきだったが、なにより音楽だった。TikTokもInstagramもなかったが、当時は前略プロフィールやmixiというSNSの前身が流行っていて、学校の友人と上手くやれなかったわたしはこれらで音楽の趣味が合う友人をつくって一緒にライブに行ったりしていた。今のSNSと大して変わらない。当時も誹謗中傷が問題視されていたし、問題視されただけでまったく改善されなかった。今のSNSと、おんなじ。 そんな高校時代にすきになったバンドのひとつに、andymoriがいる。10年前に解散したが、その後もずっと不安定でふにゃふにゃな精神を支えてくれている。ボーカルの小山田壮平さんのソロも、その後結成したALというバンドのライブにもしつこく通っている。ふにゃふにゃなままでもいいか、と思える。 先日、Twitterのおすすめトレンドに「andymori」と出てきた。なんだ?と思っていくつか投稿を見てみると、「若者がTikTokでアンディの曲を踊っている」とのことだった。いやいや。嘘嘘。と思った。昔の曲がTikTokで流行るという文化は知っていたが、もっと昔の曲のイメージだった。昭和や平成初期の曲が令和に改めて流行るという印象だった。ねぇ若者、andymoriはちょっと最近すぎない?と思った。あと、‟改めて”流行るという印象。高校生のとき、アンディを聴いてたのはライブハウスに行くような子達で、大学時代に解散を惜しんでいたときも、多くの人とその悲しみを共有することはできなかった。その二年後のSMAP解散に比べたら、世の中的には小さな出来事に見えた。なのに、今?なんで?若者よ、なんで?