森のなかにDIYした小さな家で、毎月約11万円で暮らす。その男性は持続可能な経済的自由を得た(海外)
森のなかは電気がない
ボイセン氏が愛犬とともに暮らしているそのタイニーハウスの広さはおよそ14平方メートルで、電気網、暖房網、水道、下水システムとはつながっていない。 「ソーラーパネルを使ってエネルギーをつくり、雨水を集め、火をくべるために薪を割っている。その意味では自給自足だ」とボイセン氏は説明し、食べ物も一部は自分で育てていると付け加えた。 初めて電気も水道も通じていない森で暮らすと話したとき、両親はとても驚いたそうだ。 「家族はそれほど型破りなタイプではないので、私がまともな生活から逸脱するのではないかと、心配したのだろう。そんなところに住んで、どうやって年金を確保するのか、充分な収入を得るのか、家を買うのか、家庭を築くのか、などと考えたのだ」とボイセン氏は言う。 しかし、彼がソーシャルメディアで注目を集め、地元デンマークのニュースでも取り上げられたことで、両親も息子の型破りなライフスタイルに理解を示すようになった。 「おそらく見方が変わったのだろう。この運動は、私個人の願望よりも大きい何かであることに気づいたのだ。これは実際、多くの人が今の社会でやりたいと思っている何かについて物語っている」と彼は付け加えた。 また、彼は多くの人が想像しているほど孤立しているわけではない。 「私は未舗装の道路の終わりに住んでいるが、この道路沿いにも隣人がいる。ただし、道の端に住んでいるので、頻繁に会うわけではない」 友人や家族と会うことも多い。 「結局のところ、私には9時5時で働いていたころとは違って、人付き合いを優先する時間も柔軟性もあるのだから」と彼は付け加えた。
自分の生き方は自分で決める
タイニーハウスでの生活やホームステディング(自給自足のひとつの実践法)に魅了されたのはボイセン氏だけではない。 住宅価格が高騰し、都市部での生活費も非常に高い昨今、マイホームをもつことは、ますます難しくなりつつある。これはアメリカに限った話ではなく、全世界でそうだ。一部の人々にとっては、小さな暮らしは選択肢ではなく、不可欠なのである。 そうは言っても、多くの人にとっては、小さな暮らしやホームステディングはみずからの生き方を決める際の選択肢となる。 以前Business Insiderの取材に応じたタイニーハウスの住人6人は、小さな暮らしは経済状況を改善するための手段だと話した。ほかのホームステディング実践者はBusiness Insiderに対して、現状を拒絶する方法として、その生活を選んだと説明した。 実際、ボイセン氏は、今の生活で最も好ましいのは、自然に囲まれて自由に生きられる点だと言う。 「嫌なことがあっても、外に出て、日の光を浴びながら何か作業をすれば、気分がよくなる」とボイセン氏は言う。「この生活を、私はとても楽しんでいる」 仕事や生活はこうあるべき、などという社会の通念に縛られないのもありがたいとも付け加えた。 「自分の人生で何をしたいか、何に情熱を注ぎたいかを、自分で決めることができる。家を維持するためにたくさんのお金を稼ぐ必要はないからだ」 自分がやりたいことには、土地の手入れや、家まわりの拡充も含まれる、とボイセン氏は言う。自給自足に加えて、ボイセン氏は電気水道のない生活について全国で講演活動を行なうことで収入も得ている。 また、フリーランスとしてタイニーハウスの建て方を伝授する講座も開いているし、YouTubeに動画も投稿している。YouTubeチャンネルには2万6400人の登録者がいて、最近は収益が出始めたそうだ。 「私の動画を見て何かを学んだというコメントをもらうたびに、この上ない喜びを感じる」とボイセン氏は語る。「なぜなら、コメントがあるということは、私は真空内で生きているのではなく、私の行動がほかの人に影響を与えていることを意味するからだ」 収入を補うために、ボイセン氏は敷地内に小さな離れも建て、エアビーアンドビーを介して貸し出している。 「去年開いた建築コースの一環として建てた」とボイセン氏は説明する。「今年の夏は、より快適にすることに重点を置いた。今では、シャワー、トイレ、キッチンと、実際に住むのに必要な機能のすべてがそろっている」