楽天FA今江の挑戦とオコエの存在。
「最初は、そりゃあ、落ち込みましたよ。情けなかった。でもチームになじめるんだろうか?と不安だっただけに、2軍で若い選手と一緒にじっくりとできたことで、チームに溶け込むことができました。それにもし1軍キャンプスタートだと緊張もするし、早く仕上げようと焦って、そのことが悪影響を与えたのかもしれません。1年間という長いシーズンでチームの勝利に貢献するためには、2軍でキャンプを送ったことが逆に良かったんじゃないか、と前向きに捉えているんですよ。それに同じパ・リーグの移籍ですから知らない対戦相手はいないわけですからね。気持ちでなんとかします!」 今江の表情は意外と明るかった。 そして1軍に合流して、いい刺激をもらった。開幕1軍に残ったスーパールーキー、オコエ瑠偉の存在である。研究熱心で、なんとかプロの世界で生き残ろうと、試合中もベンチ内で今江の横に座りプロのピッチャーの球筋や対処の仕方を質問してくる。その貪欲さと野球に取り組む無垢な姿勢に触れると、今江も忘れかけていた原点を思い出す。 「オコエは本当に真面目で熱心ですよ」。プロ15年目にしてFA移籍して、初めてロッテ以外のユニホームに袖を通した。そこには、ここからの野球人生のグラフを再び右上がりにするために再リセットするんだ、という思いも込められていた。 ここ数年を見ると野手のFA移籍で初年度に成功したといえるのは横浜からソフトバンクに2010年オフに移籍して、初年度に首位打者を獲得した内川聖一くらいだ。横浜から巨人に2011年に移籍した村田修一にしても初年度は、144試合に出たが、打率.252.12本、58打点。前年度に20本だったアーチも減った。西武から巨人に2012年オフに移籍した片岡治大も苦しんだし、昨年は、日ハムからヤクルトに移籍した大引啓次、日ハムからオリックスに移籍した小谷野栄一が、いずれも怪我に泣かされた。今江は開幕前から野手にとって生命線とも言えるふくらはぎを痛めてしまったわけだが、彼が言うようにシーズン中でなかったのは幸いしている。 2005年、2010年と日本一に輝いた千葉ロッテの象徴の一人は今江だった。シリーズでは、共にMVPを獲得している。ここ一番の勝負強さが今江の今江たる所以。梨田監督はそこに期待して5番で起用した。 ソフトバンクの開幕投手、摂津正との昨年の対戦成績は、10打数3安打の打率.300で、そのうち一本は二塁打と相性がいい。薄暮の仙台で、今江の新しい挑戦がスタートする。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)