もはや美術品! 川での一瞬を切り取った食品サンプル 跳ねる鮎、泳ぐ鮎、水しぶきまで 制作者に聞いた
鮎が川面を跳ねる瞬間を切り取ったかのような食品サンプルがSNS上で注目を集めています。製作の経緯や見どころについて取材しました。
「食品サンプルの領域を超えた作品」
6月上旬、食品サンプルを手がける「いわさき」のX(旧ツイッター)アカウントがこんな投稿をしました。 「食品サンプルの領域を超えた作品です。川面からバッシャーンと飛び上がる鮎!!! 川底に泳ぎ回る鮎もまるで空間を切り取ったかのように。まさに感動の一作です」 添付された画像に写っているのは、鮎が川面を跳ねる瞬間を切り取ったかのような食品サンプル。 よく見ると、水しぶきの下にも鮎たちが泳いでいることがわかります。 この投稿に対して、「俺の知ってる食品サンプルじゃない」「剥製と言われても納得」といったコメントが寄せられ、いいねは2万1000を超えています。
いわさきに聞きました
「製作したのは大阪工場所属の60歳男性で、工場長経験もある食品サンプル製作歴40年の大ベテランです」 そう話すのは、いわさきの広報担当者です。 この作品は、年1回開催されている「社内製作コンクール」に出品されたもの。 社内製作コンクールは、普段は飲食店のオーダーに忠実なものづくりを目指している担当者が「つくりたいものをつくる」ことを許される場です。 本物と区別のつかないリアルな作品や、遊び心満載の「映える」作品などが寄せられるといいます。 「長年にわたるコンクールは多くの新技術や新しい表現方法の発見につながり、それを会社全体で共有することで新商品の開発へとつながっています」
日頃の技術を生かして
今回の鮎の作品は、2023年のコンクール向けに作られたものです。 この時の募集テーマは「食品サンプルの可能性」。 作者の男性は、スーパーで鮎が売られているのを見て、子どもの頃に川遊びで鮎を追いかけたことを思い出し、食品サンプルにしてみようと思ったそうです。 最初は水中を泳いでいる鮎だけを製作する予定でしたが、何か動きを表そうと、途中で飛び跳ねている動きをつけることに。 魚は実際の鮎から型を取って製作し、跳ねている1匹はアクリルの棒で固定してあります。 棒と水しぶきを一体化させることで目立たないように工夫し、躍動感を演出。 跳ねた魚については箸やフォークで食品サンプルを持ち上げる時の技法、水泡については炭酸のドリンクを作成するときの技法が生かされています。 「コンクール作品は通常業務の合間に製作するという決まりがありますので、限られた時間のなかでどれだけ生きの良さを表現できるかに苦労した、と話していました」