住友ゴム、グローバル展開が可能になった四輪「DUNLOP」ブランド説明会 「アクティブトレッドやプレミアム商品の価値をグローバルで最大化できる」と山本悟社長
住友ゴム工業は1月8日、米国のGoodyear(The Goodyear Tire&Rubber Company)より、欧州・北米・オセアニア地域における四輪タイヤ「DUNLOP(ダンロップ)」の商標権等の取得に関する説明会を実施した。 【画像】2015年6月のアライアンス解消後のDUNLOP商標の使用エリア状況 両社は1999年6月にアライアンス契約を締結し、製造・販売合弁会社の設立や技術交流・共同開発、共同購買のための合弁会社の設立など、関係をより強固にするための株式の相互持ち合いなどを推進してきたが、2014年1月10日にGoodyearからアライアンス契約および合弁事業解消の申し入れがあり、2015年6月4日付けで両社のアライアンス契約および合弁事業は解消された。 その際、北米(カナダ・メキシコ含む)での非日系自動車メーカー向けおよび市販タイヤに関するDUNLOP商標使用権と、欧州事業(製造および販売)はGoodyearが引き継ぐこととなったほか、オセアニア地域はアライアンス契約以前と同じくGoodyearが継続した。 また住友ゴム工業は、米国ニューヨーク州にある年間460万本の生産能力を有するタイヤ生産拠点バッファロー工場を取得。北米ではDUNLOP商標を使えないものの、新たな生産拠点を入手したことでFALKENブランドの事業拡大が進められてきた。 その後、2024年5月の決算説明会にて住友ゴム工業 代表取締役社長の山本悟氏は、「グッドイヤーさんのほうで、今(DUNLOPブランドが)売却に出されているのはもちろん承知をしており、関心はありますが詳細についてはお話することはできません」としていた。同じく11月の決算説明会でも、「ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアでDUNLOPブランドを使用できることになりますと、われわれのさらなる成長に向けた展開はしやすくなる」と言及していた。 そして今回、Goodyearと交渉を続けた結果、ついに欧州・北米・オセアニア地域における四輪タイヤのDUNLOP商標権等の取得に成功。インドなど一部エリアはまだ第三者が権利を持っているものの、ほぼグローバル全域で四輪タイヤにおけるDUNLOPブランドの展開が可能となった。 今回の商標権等の取得について山本社長は、「これまで日本やアジアで磨き上げてきたタイヤ事業の成長の核となる“アクティブトレッド”や“センシングコア”など独自技術を搭載した差別化商品や、SUVおよび18インチ以上の乗用車用タイヤといった『プレミアム商品』の価値をグローバルで最大化できるようになる」と言及。 続けて、「アライアンス解消後の北米ではFALKENブランドのエッジの効いたタイヤの販売が事業の中心で、ティア2のトップブランドには成長できたもののティア1になるのはなかなか厳しかったが、グローバルで認知率の高いティア1ブランドのDUNLOPでプレミアムカテゴリの商品を展開することで、大きな伸びしろがあると期待している」と説明。また、2024年10月に日本で発売した次世代オールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」については、北米や欧州でも2027年には発売させたい意向を示した。 Goodyearからの欧州・北米・オセアニア地域における四輪タイヤ「DUNLOP」の商標権等の取得費用は826億円だが、それ以外にも欧州DUNLOP製品の顧客移行などに関する移行サポート費用が約165億円、さらに初期在庫の買い取り費用もGoodyearの発表によると約108億円ほど必要となり、総額は約1100億円となる。契約のクロージングは2025年5月(予定)で、費用は自己資金および借入金など発表しているが、多くは借入金の予定という。また、Goodyearによる商品供給契約もあり、自社製造への完全移行まで3~5年はかかる見込みとしている。 ただし、グローバルでDUNLOPブランドの四輪プレミアムタイヤの展開がスタートすることで、早々に2桁億円レベルの売り上げが期待できるほか、3桁億円の売り上げも近い将来達成できると予測しており、2025年3月にそれらを織り込んだ中期計画の見直しと成長戦略を発表する(予定)としている。 また、Goodyearとのアライアンス解消時に引き取った北米のバッファロー工場も、生産性改善と収益化のための時間軸が合わないとの判断で閉鎖をすでに発表しており、生産はタイとインドネシアへの移管も決定。今後はタイやインドネシアから北米へ輸出することになるが、トランプ政権になり10%ほど関税が上がったとしても利益は出せるとしている。
Car Watch,編集部:塩谷公邦