30年続いたデフレ→インフレに。知っておくべき、日本に起こっている5つの構造変化【余命10年・岸博幸】
2023年1月、多発性骨髄腫という血液のがんに罹患していることを知った岸博幸氏。余命10年を告げられた岸氏が、闘病の記録や今後の生き方、日本の未来への提案をつづった著書『余命10年。多発性骨髄腫になって、やめたこと・始めたこと。』の一部を再編集してお届けする。第5回。 【表画像】国別デジタル競走力ランキング
お金を貯めこむより、有意義に使った方が得になる
日本の経済・社会は大きな時代の変わり目に差し掛かっている。なぜなら、5つの大きな構造変化が同時進行で進んでいるからだ。少々小難しい話になるが、ひとつひとつ説明していこう。 第1の構造変化は、「デフレからの脱却」。 30年続いたデフレが、インフレに転換するということは、人や企業の行動原理が、これまでとは正反対にならざるを得ないということ。 最たるものがお金の使い方だろう。 デフレの時代は、モノの値段が下がり続けるから、なるべくお金は使わず、持っておくのが合理的だった。対してインフレになると、モノの値段はどんどん上がるため、お金の価値は下がってしまうのだから、お金を貯めこむより、有意義に使った方が得になるというわけだ。 問題はデフレが30年も続いたので、30代半ばまでの若い世代はインフレの時代の感覚がわからない。企業もすぐには行動原理を変えられない。この変化への対応は大変だ。
2050年には世界各国の人口が減少
2つめは「人口減少」。 日本の総人口は2011年からすでに減少しているが、このペースは今後さらに速まると予想されている。実はこれは、日本に限ったことではない。 中国は2021年に人口がピークに達し、韓国は日本以上に低い出生率にあえいでいるなど、東アジア全体でも遠からず人口減少が始まるだろうし、2050年にはアフリカやアジアの一部を除く世界各国の人口が減少し始めると言われている。 となると、世界レベルでの労働力の奪い合い、特に優秀な人材の奪い合いが確実に起こる。 日本はこれまで安い労働力を外国人に頼ってきたことで、生産性の低さを補ってきたが、それは難しくなる。第一、世界規模で引く手あまたの優秀な外国人に、すごく貧しくなった日本を選んでもらえる可能性は高くないだろう。