CCS・CCUSの理想と現実、日本の脱炭素政策に潜む「落とし穴」とは
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)とは、資源エネルギー庁によると、「CO2を集めて地中に貯留する」ことと説明される。一方、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)では、CCSのCapture(回収)とStorage(貯留)の間に、Utilization(利用)が入り、捕まえたCO2をセメント製造などで直接使ったり、化学製品などの材料にしたりを目指している。日本政府の資料に度々登場するこのCCS・CCUSはどこまで期待できるのか、実現性やコストも含め、本稿で検証する。 【詳細な図や写真】図2:技術別の世界のエネルギー部門の累積CO2排出削減量(出典:IEA, Energy Technology Perspectives 2023)
CCS・CCUSとは何か
CCS・CCUSは、温暖化の原因物質であるCO2を捕集し、それを地下に貯蔵する技術である。似た方法に空気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture)があるが、CCUS((注)本稿では、以降、CCSとCCUSをまとめて「CCUS」と表記する)は、CO2をその排出源から分離することを想定している。図1のように、火力発電所や製油所、化学プラントなどが対象となる排出源で、回収したCO2は通常地層に埋められることになる。 CCUSのメリットは、CO2の排出源で化石燃料を使い続けても脱炭素が達成でき、既存の発電設備や製品の製造などのシステムをそのまま利用できる点にある。 それはとても便利に思える技術だが、実は厄介なハードルがいくつも存在する。CO2を分離した後のCO2を貯留するための場所探しが非常に大変なのだ。また、全体としてのコストの問題もいまだに残り続けている。
世界はCCUSにどこまで期待しているのか
図2は、国際エネルギー機関(IEA)による、2050年に向けて必要なCO2削量を技術別に当てはめたものである。具体的には、2021年から2050年までのトータルのCO2発生量をどのツール(技術)を使って解決するかの割合を示している。 最も重要視されているのは、明るいグリーンで示されている太陽光発電・風力発電で、累積CO2の31%をいわゆるVRE(可変的再エネ)で削減するプランとなっている。続いて電化(青、17%)、エネルギー効率化(オレンジ色、16%)で、CCUSは10%(赤茶色)という数値でその役割が示されている。これは決して小さい値ではない。1割といっても世界全体の脱炭素が分母である。 世界は脱炭素ツールとして、CCUSに一定の期待を示しているのだ。 もう少し詳しく見てみよう。