「ガンダム」シリーズの美しき裏切りキャラ 彼女たちはなぜ許された? その背景事情
「そりゃ、そうだよね…」と思ってしまう裏切りのワケ
数多くの組織や人間の思惑が複雑にからむことの多い「ガンダム」シリーズには、本来の立場とは違う勢力で影をひそめる「裏切り者」がしばしば登場します。その行動は一見すると否定的にとらえられるものの、なかには背景を知った視聴者から「許された」キャラもいました。 【画像】「こりゃ、許すわ」といわざるを得ない 「ガンダム」シリーズの美少女揃いな裏切りキャラたち(3枚) 『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場する「ジオン軍」の残党部隊「デラーズ・フリート」の女性将校「シーマ・ガラハウ」は裏切った理由が明らかになると、大きく印象を変えた人物です。 シーマは宇宙へと上がった主人公「コウ・ウラキ」の前に敵として立ちはだかりました。しかし、裏で「地球連邦軍」に内通していたシーマは、終盤でデラーズ・フリートに反旗を翻します。その後は裏取引によって連邦軍に協力しますが、一連の事実を知って激怒したコウがシーマの部隊を襲撃した際に戦死しました。 因果応報と思われたその最期は、のちに発表されたドラマCD『宇宙の蜉蝣』により見方が一変します。ジオン軍によって故郷を奪われ、汚れ仕事を押し付けられて戦犯になるといった、彼女の悲惨な境遇が明かされたのです。裏切りに至る納得の理由によって、視聴者はシーマを好意的に見るようになり、2018年に行われた「全ガンダム大投票」のキャラクター部門(総合ランキング)では47位に入りました。 また『機動戦士ガンダム 水星の魔女』で「アスティカシア学園」の「地球寮」に所属し、メカニック科の生徒として通う「ニカ・ナナウラ」も、仲間を裏切ったといえるキャラです。物語序盤でのニカは、主人公「スレッタ・マーキュリー」に対し面倒見がよく優しい生徒として描かれます。 しかし、ニカは学園を運営する「ベネリットグループ」に属する大企業の御曹司のひとり「シャディク・ゼネリ」と、反スペーシアン(宇宙居住者)組織「フォルドの夜明け」とを仲介する連絡係として学園に潜入していたのです。 正体が露見し葛藤するなか、地球寮の仲間を取り連絡係の立場を裏切った結果、シャディクたちに軟禁されます。最終的に罪を償う形で学園を退学しましたが、彼女は「地球と宇宙の懸け橋になる」という夢を果たすため、今度は自力で学園に再入学したのでした。 シャディクとフォルドの夜明けを取り持つ連絡係の立場を地球寮の仲間に隠していたことが裏切りであれば、連絡係として公的機関に告発未遂をしたため、どちらの勢力に対しても裏切ったことになるでしょう。一番の被害者は最初に正体に気付き、ニカの気持ちに翻弄されて傷ついた地球寮の寮長「マルタン・アップモント」かもしれません。 ニカによる直接的な加害がなかったことや、地球寮のメンバーとしての物語に対する貢献度の大きさから、「ニカ姉も出所後は幸せに過ごしてほしい」「ニカは最終回を観ていろいろと考えるうちに大好きになった」など、好意的に見る視聴者も少なくありません。その人気ゆえか、たびたびフィギュア化もされています。 たとえ裏切り者でも、納得に足る理由や信念があれば視聴者から許されるのでしょう。例えばシーマと同じく『0083』に登場し、ガンダム三大悪女のひとりに数えられる「ニナ・パープルトン」は、裏切りとまではいきませんが、視聴者に心情が見えないまま敵対するふたりの男性の間で、どっちつかずの態度だったように見えるため許されていないのかもしれません。
LUIS FIELD