60~65歳の従業員の賃金、来年から国の補助率が縮小 15%からどれだけ下がる?事業承継に新たな課題
現在、60~65歳までの従業員に対し、国が毎月の賃金を補助する「高年齢雇用継続給付制度」が実施されている。再就職に伴い、賃金が下がったことをフォローするため、毎月の賃金の15%を国が支給する制度だ。しかし、2025年4月からは補助率が縮小し、10%になることを厚生労働省が発表した。 【動画】なぜ事業承継が大切なのか専門家に聞いた。
◆30年前はすごく手厚かった
ハローワークによると、制度の目的は、「高年齢者の就業意欲を維持・喚起し、65歳までの雇用継続を援助・促進する」となっている。 制度が創設されたのは1995年4月。当初は、この制度を活用し、60歳で定年、その後5年間勤務して65歳から年金生活に入るという労働者の数は、さほど多くなかった。 当時は60歳から年金生活に入るのが一般的だったからだ。 そのため、制度スタート時の補助率は、賃金の25%と高かった。 しかし、少子高齢化の進行で労働人口が減少し、人手不足が深刻化する中で、65歳定年が浸透し、高年齢雇用継続給付制度も見直しが行われた。 2007年には現行のように、賃金と給付額の合計が60歳時の75%未満の労働者が対象にとなり、補助率は賃金の15%まで引き下げられた。 現行制度の対象となる条件は以下の通りだ。 1.雇用保険の被保険者が60歳以上65歳未満の一般被保険者であること 2.被保険者であった期間が5年以上であること 3.原則として60歳以後の賃金(みなし賃金を含む)が75%未満になっていること 4.再就職前日における基本手当の支給残日数が100日以上あること
■将来は、制度自体がなくなるかも
さらに、来年2025年4月には給付率が15%から10%にまで縮小される。 縮小の理由について厚労省は「高年齢者の雇用を確保する措置の進展を踏まえたため」としている。 将来的には、この制度は廃止される見通しだ。 上場企業を始めとした大手企業の多くは、厚労省が指摘するように、高齢者の雇用を確保する措置をすでに確立している。 しかし、中小の企業では、高年齢雇用継続給付制度の恩恵に浴している企業が少なくない。 中小企業は、給付率の縮小や制度廃止を見据えて、抜本的な高年齢者雇用の仕組みづくりを進める必要がありそうだ。 中小企業経営者も高齢化が進む中、円滑な事業承継にとって、喫緊の大きな課題のひとつとなってくる。
取材・文/ジャーナリスト 三浦 彰