九州・沖縄の医療機関、倒産件数が過去最多 コロナ禍の「受診控え」から患者戻らず
全国で医療機関の経営不振が相次いでいる。九州・沖縄では今年、倒産件数がすでに計12件を数え、2000年以降で過去最多となった。20年に新型コロナ禍による「受診控え」が相次いで以降、患者が戻らないことが背景にある。長崎県では救急指定病院の運営法人が破産し、閉鎖で入院患者が転院を強いられた。 信用調査会社の帝国データバンク福岡支店によると、九州・沖縄で今年1~11月の医療機関の倒産件数は病院2件、診療所6件、歯科医院4件の計12件(負債総額約40億円)を数える。これまでは13、18年の各9件が最多。担当者は「過剰債務で法的整理を選ぶケースが目立つ。診療所は経営者の高齢化や後継者不足も事業断念の要因になっている」と指摘する。 長崎県佐世保市では6月、杏林病院(180床)を運営していた医療法人篤信会が長崎地裁佐世保支部から破産手続きの開始決定を受けた。周辺自治体からも重症患者を受け入れる「2次救急」の指定病院。コロナ禍で外来・入院患者が減り、23年3月期の法人の収入はコロナ前より2割以上落ち込んだという。人件費や借入金の返済負担も重く、病院は診療を止め、建物を閉鎖した。 入院患者76人は透析患者など緊急度の高い順に別の医療機関や介護施設に移し、医師や事務職ら139人を全員解雇。市医療政策課は「地域のかかりつけ医の役割も果たしていた。直前まで経営難は知らなかった」と振り返る。 8月には宮崎県都城市で心臓疾患専門の病院を運営していた医療法人社団が、宮崎地裁から民事再生手続きの開始決定を受けた。病院は医療法人桜十字(熊本市)の資金支援や運営指導などを受けて診療を継続している。コロナ患者の専用病床を設けず、国から関連補助金を受けられなかった小規模や単科の医療機関は厳しい傾向にある。 (座親伸吾)