1年前の大雨で被災したままのJR美祢線。盛り土が流出し、残された線路が宙づりでうねっている＝美祢市

　1年前の大雨で被災した山口県西部のJR美祢線（46・0キロ）で全線運休が続いている。沿線自治体は早期復旧を要望してきたが、JR西日本は利用低迷などを理由に応じず、両者の溝は埋まらない。復旧は手つかずのままだ。 【写真（空撮あり）】復旧が手つかずのまま運休が続くJR美祢線 　美祢市を流れる厚狭（あさ）川沿いの線路は今も無残な姿をさらす。川からあふれた水で線路下の盛り土が流され、残った線路がうねった形で宙づりになっている。犬を連れて近くを歩いていた高齢の女性は「もう駄目じゃろうねえ」とつぶやいた。 　JR西によると美祢線は2023年6月30日～7月1日の大雨で、湯ノ峠（ゆのとう＝山陽小野田市）―長門湯本（長門市）間（36・8キロ）の80カ所が被災。美祢市では第6厚狭川橋梁（きょうりょう）が流失した。10年の豪雨で被災し復旧した場所も含まれていた。 　「高校生の通学に不可欠で、山陰と山陽を結ぶ重要な路線」。沿線3市と県は早期復旧を要望し、工事費の分担に前向きな姿勢も示した。 　一方、JR西は協議に応じたが慎重姿勢を崩さず、今年5月に広岡研二広島支社長は「JR単独での復旧は非常に難しい。仮に復旧させても、JR単独での持続的な運行は困難」と表明。美祢線の持続可能性などを議論する場を設けるよう提案した。廃線も視野にあるとみられる。長年の利用低迷が背景にある。 　1キロ当たりの1日平均乗客数を示す輸送密度はコロナ禍前の19年度で478人。車社会化が進む中で、JR西が発足した1987年度の3分の1以下に減っている。 　被災前年の22年4月、JR西は輸送密度が2千人未満の赤字ローカル線17路線30区間を「単独では維持困難」とし、収支を公表した。美祢線も含まれ、年間赤字額は17～19年度の平均で4億4千万円だった。 　ローカル線を巡る情勢が厳しさを増す中、災害が廃止の引き金となるケースは後を絶たない。17年の豪雨で不通となったJR日田彦山（ひたひこさん）線添田―夜明間（福岡、大分県）は23年8月にバス高速輸送システム（BRT）に転換。22年の豪雨で被災した路線も、青森県のJR津軽線の一部が復旧せず廃止の見込みとなったほか、山形、新潟両県にまたがる米坂線の一部も復旧見通しが立っていない。