伯桜鵬、右上腕二頭筋断裂も“ど根性”白星「土俵に上がっている以上痛み感じない」自ら鼓舞
<大相撲夏場所>◇4日目◇15日◇東京・両国国技館 右上腕二頭筋を断裂している西十両8枚目の伯桜鵬(20=伊勢ケ浜)が、執念で白星を挙げ、2勝2敗と星を五分に戻した。痛む右腕で小手投げを繰り出し、東十両10枚目の紫雷を破った。敗れた2日目の玉正鳳戦で痛めた右腕は「力が入らない」。前日3日目の千代栄戦も敗れたが、連敗を「2」で止めた。元幕内北青鵬の暴力問題で、先場所まで所属の宮城野部屋が閉鎖。伊勢ケ浜部屋に転籍して最初の本場所で、気迫全開の土俵を続けている。 痛めているとは思えないほど、小手投げのキレ味は鋭かった。伯桜鵬は立ち合いで、左を差して紫雷を組み止めた。膠着(こうちゃく)状態から、相手が前に出ようとしたタイミングを察知。相手の推進力を利用して投げ、土俵外に転がした。投げは華麗だったが、取組直後はテーピングを施した右腕を気にしていた。痛みは「変わらない」と残っており、治ったわけではない。それでも「土俵に上がっている以上、痛みは感じない」と、自らに言い聞かせた。「気持ちを強く持って土俵に上がった」。執念でつかんだ白星だった。 2日目の取組で投げを打った際に「音が鳴った。プチッと」と、痛みが出て取組後は病院に行って診察を受けた。右上腕二頭筋断裂だった。3日目も敗れ、この日は「右が十分に使えないので、組まずに前に出たいと思っていた」と突き、押しを駆使しようと考えていた。それだけに「左四つに組んでしまった。内容は良くない」と反省。それでも勝ったことと、先場所から今場所にかけての環境の変化に因果関係があった。 4月に伊勢ケ浜部屋に転籍したことで、横綱照ノ富士と同部屋となった。初日3日前には、稽古で初めて胸を借りた。約30分間、泥だらけになって立ち向かった。それでも腰の重い照ノ富士を押し切れずに止まると「力を出し切れ! 動け!」などと厳しい言葉が飛んだが、伯桜鵬は「自分の弱いところを横綱は1つ1つ教えてくれた。自分の弱さ、甘さを痛感した。路頭に迷い、腐りかけていたけど横綱の言葉で強くなりたいと思った」と感謝。一皮むけた日だった。 稽古後、照ノ富士は「ポテンシャルはいいものを持っている」と認め、満足そうに話していた。そんな期待に応えたい思いも、伯桜鵬を後押しした。連敗を止めたことには「勝てたのは少し良かった」と、ホッとした様子も見せた。愛称は「令和の怪物」。ガムシャラに“ど根性”でつかんだ1勝は、昭和のにおいが漂っていた。【高田文太】